大腿骨骨折で入院した86歳Tさんと、尿路感染症と敗血症で入院した87歳Uさんが、漢方薬+リハビリで回復できた実例を紹介!

大腿骨骨折で入院した86歳Tさんと、尿路感染症と敗血症で入院した87歳Uさんが、漢方薬+リハビリで回復できた実例を紹介!

大腿骨骨折で入院した86歳Tさんと、尿路感染症と敗血症で入院した87歳Uさんが、漢方薬+リハビリで回復できた実例を紹介!(Annette MeyerによるPixabayからの画像)

前回2月9日ブログに続き、玉野 雅裕先生がたのチームが漢方薬+リハビリの治療法で、大腿骨骨折から誤嚥性肺炎を併発して危篤状態になったTさんと尿路感染症と敗血症から寝たきりになったUさんを、歩けるまでに治療なさった実例を紹介します。

1.実例2:86歳女性、Tさん

主な症状:食欲がない、起き上がれない、歩けない、やる気がでない。

既往歴:高血圧で薬を服用中。

現病歴:①左大腿骨頚部骨折で入院。

②手術後に誤嚥性肺炎を併発。

大腿骨骨折で入院した86歳Tさんと、尿路感染症と敗血症で入院した87歳Uさんが、漢方薬+リハビリで回復できた実例を紹介!

大腿骨骨折で入院した86歳Tさんと、尿路感染症と敗血症で入院した87歳Uさんが、漢方薬+リハビリで回復できた実例を紹介!(MariyaによるPixabayからの画像)

漢方医学的所見:*脈は「弦脈(げんみゃく)」で弓の弦が張ったような縦方向に緊張感のある脈で、遅くて強く押し付けないと感じられない脈の打ち方です。これは、ストレスや気滞という気の流れの停滞を示します。(*1)

*舌は歯根舌。これは歯の跡が付いていて、「水毒(すいどく)」という症状で、身体の水分が偏って溜まっていることを示します。また、舌に苔があるのは、程度の差はあれ、胃などに余分の水が溜まっていることを示します。(*2)

*腹力は弱。仰向けに寝て腹部の筋肉の緊張を診た時、腹壁が薄く腹筋の弾力が弱い様子。これは、生命力が衰え病気を跳ね返す予備力が衰えていることを示します。(*3)

*左右が胸脇苦満。左右の肋骨の下、季肋部と呼ばれる部分が固く張り、指を滑り込ませるように入れた時に、痛みや不快な圧迫感が軽くある状態。これは、「胸脇苦満(きょうきょうくまん)」と呼ばれ、心理的なストレスで神経が張り詰めているときにも起こります。(*4)

*臍上悸。臍の左上で腹部大動脈の拍動を触れることができる。これは、「臍上悸(せいじょうき)」と呼ばれ精神の病的な緊張を示します

大腿骨骨折で入院した86歳Tさんと、尿路感染症と敗血症で入院した87歳Uさんが、漢方薬+リハビリで回復できた実例を紹介!

大腿骨骨折で入院した86歳Tさんと、尿路感染症と敗血症で入院した87歳Uさんが、漢方薬+リハビリで回復できた実例を紹介!(피어나네によるPixabayからの画像)

2.Tさんの漢方薬+リハビリによる臨床経過

臨床経過:①左大腿骨頚部骨折で入院。

②手術後、誤嚥性肺炎を併発して一時生命に危険が及ぶ状態に陥る。

③回復後も寝たきり状態となった。

④「補中益気湯」(*5)の服用により、食欲が改善。リハビリも開始。

起き上がれるようになり、更にリハビリテーションの効果があがってシルバーカーで歩けるようなった

老人保健施設へ転院し、以降、肺炎の再発はない

大腿骨骨折で入院した86歳Tさんと、尿路感染症と敗血症で入院した87歳Uさんが、漢方薬+リハビリで回復できた実例を紹介!

大腿骨骨折で入院した86歳Tさんと、尿路感染症と敗血症で入院した87歳Uさんが、漢方薬+リハビリで回復できた実例を紹介!(Hyejin LeeによるPixabayからの画像)

3.実例3:87歳女性、Uさん

主な症状:食欲がない、起き上がれない、歩けない、尿を溜めたり、出したりする神経がうまく動かない。

既往歴:脳梗塞の後遺症、認知症

現病歴:①尿路感染症が重症化したため敗血症を併発し、生命を脅かす状況で入院。

②迅速な抗菌化学療法で回復。

③しかし、回復後も尿路感染による発熱を繰り返し、寝たきり状態になった。

服用した薬:膀胱治療薬「ビベグロン」と認知症治療薬「  ガランタミン」と解熱鎮痛消炎薬「アスピリン」と低用量アスピリンを服用する時に胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発を抑制する薬「ランソプラゾール」

大腿骨骨折で入院した86歳Tさんと、尿路感染症と敗血症で入院した87歳Uさんが、漢方薬+リハビリで回復できた実例を紹介!

大腿骨骨折で入院した86歳Tさんと、尿路感染症と敗血症で入院した87歳Uさんが、漢方薬+リハビリで回復できた実例を紹介!(Annette MeyerによるPixabayからの画像)

漢方医学的所見:*脈は浮で、中間。軽く指を置くとはっきり触れるが、強く押さえると消えていくような脈を「浮脈」といい、体表部の病気に見られる。脈の強弱も中間で細くて力が弱い。(*6)

舌は紅舌(こうぜつ)。これは舌の色が赤く、熱が体にこもってしまっている状態を示します。赤ければ赤いほど熱が強いと診断されます。なお、舌は「内臓の鏡」と呼ばれています。(*7)

腹力は中程度で、心下痞。これは、仰向けに横たわり脱力した状態のお腹の筋力の強さが五段階の真ん中、中程度で、みぞおちにつかえたような、ふさがった感じがある状態です。消化吸収をつかさどる脾胃に問題があることを示します。(*8)

大腿骨骨折で入院した86歳Tさんと、尿路感染症と敗血症で入院した87歳Uさんが、漢方薬+リハビリで回復できた実例を紹介!

大腿骨骨折で入院した86歳Tさんと、尿路感染症と敗血症で入院した87歳Uさんが、漢方薬+リハビリで回復できた実例を紹介!(Beverly BuckleyによるPixabayからの画像)

4.Uさんの漢方薬+リハビリによる臨床経過

臨床経過:①尿路感染症が重症化したため敗血症を併発し、生命を脅かす状況で入院。

②迅速な抗菌化学療法で回復。

③しかし、回復後も尿路感染による発熱を繰り返し、寝たきり状態になった。

補中益気湯」の服用を始め、あわせてリハビリテーションで床上げを支援した。

食欲と気力が戻りご飯を食べるようになり、栄養状態が回復

体力が回復し、発熱しなくなった

⑦入院中に、認知症の進行もなかった。

⑧漢方薬+リハビリを始めてから2ヵ月後、自宅へ歩いて退院できた。

退院後は、週3回デイケアを利用し、尿路感染症による再入院もない。

大腿骨骨折に誤嚥性肺炎を併発して危篤に陥った86歳Tさんも、尿路感染症と敗血症で寝たきりになった87歳Uさんも、漢方薬+リハビリテーションで回復できました。あなたも諦めないで、漢方薬を処方できる医療機関を探してはいかがでしょうか?

次回2月23日は、心不全から心身の機能が酷く弱ったしまったVさんと脳梗塞による左不全麻痺で寝たきりになってしまったWさんが、漢方薬+リハビリ治療により1人で歩けるようになった実例を紹介します。

大腿骨骨折で入院した86歳Tさんと、尿路感染症と敗血症で入院した87歳Uさんが、漢方薬+リハビリで回復できた実例を紹介!

大腿骨骨折で入院した86歳Tさんと、尿路感染症と敗血症で入院した87歳Uさんが、漢方薬+リハビリで回復できた実例を紹介!(NoName_13によるPixabayからの画像)

謝辞:玉野雅裕先生をはじめこの研究に携わった先生方、ご協力なさった患者さんや職員の皆さま等全ての皆様に感謝するとともに、漢方薬がシニアの健康長寿によりいっそう役立ち、患者さんとご家族のみなさまがより良い時間を過ごせますよう、先生方の益々のご活躍・ご発展を祈念します。

症例報告「サルコペニア・フレイル・認知症進行抑制を見据えた漢方薬治療」、玉野 雅裕 / 加藤 士郎 / 岡村 麻子 / 星野 朝文 /高橋 晶 / 小倉 絹子 / 中村 優子、脳神経外科と漢方 2022年7巻61-67頁、chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.jstage.jst.go.jp/article/jnkm/7/1/7_12/_pdf/-char/ja

☆漢方のお医者さん探し ―漢方・漢方薬に詳しい医療機関(病院・医院・医師)を8,968件から検索できます。―https://www.gokinjo.co.jp/kampo/

☆ 日本脳神経漢方医学会  日本脳神経漢方医学会は脳神経領域における漢方療法に関する研究を通じて、漢方医学の普及と研鑚を図ることを目的としています。「脳神経外科と漢方」は、日本脳神経漢方医学会 が発行。https://nougekampo.org/

補注

*1:「脈診 漢方・中医学の脈診の解説」Health24 ハル薬局 http://www.halph.gr.jp/goods/myakusin100.html

*2:「舌を診る 漢方コラム」中村記念愛成病院 https://www.kouwakai-nakamura.jp/colum-0093.html

*3: 「四診について 腹診の例」井上内科クリニック https://www.inoue-clinic.net/guide/detail.php?c=6&id=204

*4: 「「胸が苦しい」と「胸脇苦満」」漢方内科けやき通り診療所 https://www.keyaki-kampo.jp/column/84

*5: 「ツムラ漢方補中益気湯:体力虚弱で、元気がなく、胃腸のはたらきが衰えて、疲れやすいものの次の諸症:虚弱体質、疲労倦怠、病後・術後の衰弱、食欲不振、ねあせ、感冒」ツムラ https://www.tsumura.co.jp/products/ippan/045/index.html

*6:「浮脈 脈を診る。」河崎医院 附属淡路東洋医学研究所 http://kawasaki-iin.net/touyou-igaku/seachguide5.html

*7:「臓腑の状態がわかる「舌」」中医学情報サイトCOCOKARA https://chuigaku-cocokara.jp/magazines/2018/11/vol15_2/

*8:「1. 腹力、2. 心下痞鞕」腹診所見 漢方医学の考え方 医療法人社団伝統医学研究会あきば伝統医学クリニック http://www.akibah.or.jp/publics/index/34/

☆この症例報告の先生方の所属(2021年時点)

玉野雅裕先生:協和中央病院東洋医学センター〔〒309-1195 茨城県筑西市門井1676 番地1 〕、筑波大学附属病院

加藤士郎先生:野木病院、協和中央病院東洋医学センター、筑波大学附属病院

岡村麻子先生:つくばセントラル病院、協和中央病院東洋医学センター、東邦大学 薬学部

星野朝文先生:ほしの耳鼻咽喉科クリニック、筑波大学附属病院

高橋晶先生:筑波大学医学医療系災害・地域精神医学

小倉 絹子先生:つくばセントラル病院

中村 優子先生:筑波大学 医学医療系 産婦人科学

以上

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