夜中に電気もつけず、テレビをつけっぱなしで歩きまわる認知症の異常行動など、漢方薬で良くなった6人の実例を紹介!(前編)

夜中に電気もつけず、テレビをつけっぱなしで歩きまわる認知症の異常行動など、漢方薬で良くなった6人の実例を紹介!(前編)

夜中に電気もつけず、テレビをつけっぱなしで歩きまわる認知症の異常行動など、漢方薬で良くなった6人の実例を紹介!(前編)(youngki sonによるPixabayからの画像)

愛知県の知多厚生病院に入院または通院していた患者さんで、西洋医学的治療で改善しない場合に漢方薬治療を併用して効果があるかを、丹村敏則先生が調査なさいました。今回と次回(4/26)に分けて、6人の実例と改善した割合を丹村敏則先生の論文からご紹介します。

1.83歳女性、Mさんの場合

主な症状夜中になると電気もつけずにテレビをつけっぱなしにして、部屋中を歩きまわる。

現病歴:①平成〇年から、認知症と診断され、神経内科でアルツハイマー型またはレビー小体型認知症の治療薬(ドネペジル)を処方されて服用を始めました。

②2年後の2月からアルツハイマー型またはレビー小体型認知症の治療薬(ドネペジル)が約3倍に増量されました。

③初診の3年後の1月から、夜中になると電気もつけずにテレビをつけっぱなしにして、部屋中を歩きまわる異常行動が酷くなりました

既往歴:高血圧と糖尿病で通院。

漢方医学的所見:お腹を縦に真ん中に走る腹直筋が緊張していて、気が昂っていると考えられます。

臨床経過:①同年5月から「抑肝散」(*1)の服用を始めました。

②同年6月には、Mさんの夜中の歩きまわりがなくなる。

③「穏やかになった」と家族から感謝の言葉をいただきました。

夜中に電気もつけず、テレビをつけっぱなしで歩きまわる認知症の異常行動など、漢方薬で良くなった6人の実例を紹介!(前編)

夜中に電気もつけず、テレビをつけっぱなしで歩きまわる認知症の異常行動など、漢方薬で良くなった6人の実例を紹介!(前編)(피어나네によるPixabayからの画像)

2.73歳女性、Nさんの場合

主な症状憂うつ症状、意欲の低下

現病歴:①平成△年秋ころから、朝方に憂うつの症状が続くようになりました。

翌年になると、Nさんはやる気や元気がなくなりました。

③同年3月から、憂うつな気分や不安感をやわらげ、意欲を高める抗うつ薬(フルボキサミン)の服用を始めましたが、改善しませんでした。

既往歴:高血圧、糖尿病、脂質異常症で通院。

漢方医学的所見:右側のあばら骨の下の部分が硬く、舌に薄白苔があり、ほてりがある。

臨床経過:①同年6月から、「加味帰脾湯」(*2)の服用を始めました。

②同年7月の定期受診の時に、Nさんから「元気がでてきた。運動もできるようになった」と言われました。

③さらに糖尿病の血糖値、ヘモグロビンエーワンシー(HbA1c)の数値が7.8%から7.3%に改善しました。

夜中に電気もつけず、テレビをつけっぱなしで歩きまわる認知症の異常行動など、漢方薬で良くなった6人の実例を紹介!(前編)

夜中に電気もつけず、テレビをつけっぱなしで歩きまわる認知症の異常行動など、漢方薬で良くなった6人の実例を紹介!(前編)(피어나네によるPixabayからの画像)

3.85歳女性、Oさんの場合

主な症状:眠れない

現病歴:①平成◇年初めころより眠れなくなりました。

②同年12月、脳の神経をしずめ寝つきをよくする睡眠薬(ゾピクロン)の服用を始めましたが、改善しませんでした。

既往歴:狭心症と糖尿病で通院。

漢方医学的所見:生命力が弱まって体の機能が低下した状態(虚証)で、舌がやや乾燥していて、気がたかぶっている。

臨床経過:①翌年4月から、「酸棗仁湯」(*3)の服用を始めました。

②服用を始めてから1週間後、Oさんはぐっすり眠れるようになりました。

夜中に電気もつけず、テレビをつけっぱなしで歩きまわる認知症の異常行動など、漢方薬で良くなった6人の実例を紹介!(前編)

夜中に電気もつけず、テレビをつけっぱなしで歩きまわる認知症の異常行動など、漢方薬で良くなった6人の実例を紹介!(前編)(피어나네によるPixabayからの画像)

4.70歳男性、Pさんの場合

主な症状:歩けない

現病歴:①平成▽年春から、Pさんは歩き難くなりました。

②同年7月上旬から、歩きづらさがひどくなりました。

同年7月下旬、ついに歩けなくなり入院。入院時は車椅子でした。

脳神経外科では異常なし

整形外科では、腰椎脊柱管狭窄症(*4)を発見しましたが歩行困難の原因は発見できませんでした。

内科は、糖尿病の血糖値コントロールは良好と評価しました。

⑦以上の結果から、鎮痛剤の服用を始めました。

既往歴:糖尿病と糖尿病神経障害と狭心症で通院。

漢方医学的所見:足の倦怠感と貧血傾向

臨床経過:①同年8月初旬より、「大防風湯」(*5)の服用を始めました。

②服用開始2日後から、補助器を使って歩けるようになりました。

③服用開始5日後からは、杖で歩けるようになりました。

夜中に電気もつけず、テレビをつけっぱなしで歩きまわる認知症の異常行動など、漢方薬で良くなった6人の実例を紹介!(前編)

夜中に電気もつけず、テレビをつけっぱなしで歩きまわる認知症の異常行動など、漢方薬で良くなった6人の実例を紹介!(前編)(Gabby HwangによるPixabayからの画像)

続きは、4月26日アップの後編をご覧ください。

在宅介護を限界に追い込む夜中の徘徊が、漢方薬で治ったらどんなに嬉しいでしょうか。また、シニアにありがちな憂うつな気分や眠れない苦しさが漢方薬で治るとは知りませんでした。

もしもあなたやあなたの大切な方が認知症の行動・心理症状(BPSD)や抑うつ症状、睡眠障害、歩行障害、便秘、誤嚥性肺炎で困っていらっしゃるなら、西洋医学的治療と漢方薬治療を併用できる病院を探してみませんか?

夜中に電気もつけず、テレビをつけっぱなしで歩きまわる認知症の異常行動など、漢方薬で良くなった6人の実例を紹介!(前編)

夜中に電気もつけず、テレビをつけっぱなしで歩きまわる認知症の異常行動など、漢方薬で良くなった6人の実例を紹介!(前編)(피어나네によるPixabayからの画像)

謝辞:丹村敏則先生をはじめ知多厚生病院の先生方、ご協力なさった患者さんや医療従事者の皆さま等全ての皆様に感謝するとともに、東西医学連携がさらに広まり、シニアの患者さんとご家族がより良い時間を過ごせますよう、すべての医療従事者の皆さまの益々のご活躍・ご発展を祈念します。

★夜中に電気もつけず、テレビをつけっぱなしで歩きまわる認知症の異常行動など、漢方薬で良くなった6人の実例を紹介!(後編) https://kizuna-iyashi.com/2024/04/26/homemade-268/

後編の目次  

5.76歳男性、Qさんの場合  主な症状:激しい便秘

6.79歳男性、Rさんの場合  主な症状:誤嚥性肺炎(*11)を何回も繰り返す

7.西洋医学的治療+漢方薬治療で良くなる、認知症のBPSD・睡眠障害・歩行障害・便秘症・誤嚥性肺炎

研究報告「高齢社会に向けて東西医学の連携が高齢者ケアに果たす有効性の検討」丹村敏則、日本農村医学会雑誌、63巻4号624-633頁、2014年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm/63/4/63_624/_article/-char/ja/ 

☆漢方のお医者さん探し ―漢方・漢方薬に詳しい医療機関(病院・医院・医師)を8,968件から検索できます。― https://www.gokinjo.co.jp/kampo/

☆JA愛知厚生連 知多厚生病院 〒470-2404 愛知県知多郡美浜町大字河和字西谷81-6 https://chita.jaaikosei.or.jp/

☆一般社団法人 日本農村医学会 http://www.jarm.jp/index.htm

補注

*1: 「抑肝散(よくかんさん):体力中等度をめやすとして、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの次の諸症:神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症(神経過敏)、歯ぎしり、更年期障害、血の道症」ツムラ https://www.tsumura.co.jp/brand/products/kampo/054.html  

*2: 「加味帰脾湯(かみきひとう):貧血、不眠症、精神不安、神経症の治療に使用されます。通常、虚弱体質で血色の悪い人に用いられます。」くすりのしおり https://www.rad-ar.or.jp/siori/search/result?n=9150 

*3:「酸棗仁湯(さんそうにんとう):通常、心身が疲れ、弱って眠れない人の治療に使用されます。」くすりのしおり https://www.rad-ar.or.jp/siori/search/result?n=9077 

*4:「腰椎脊柱管狭窄症(ようついせきちゅうかんきょうさくしょう):腰部脊柱管狭窄症は中高齢者の方に起こりやすい病気で坐骨神経痛の原因となる代表的な疾患です。この疾患は椎間板ヘルニアや変性すべり症、側弯症に加え、椎間板の膨隆、椎体の変形、椎間関節や椎弓などの骨や靭帯が肥厚する加齢性変化に伴い、脊柱管(せきちゅうかん)と呼ばれる神経の通り道が狭くなります。脊柱管内の神経が圧迫を受けると腰痛、下肢痛、しびれが出現します。圧迫の程度が軽い初期は軽度のしびれや痛みのみで日常生活にそれほど影響がないこともありますが、圧迫が重症化すると下肢の痛み、しびれ、筋力低下が出現し歩行が困難になる場合もあります。」聖路加国際病院 腰部脊柱管狭窄症の診断と治療 https://hospital.luke.ac.jp/guide/32_orthopedics/lumbar_spinal_canal_stenosis.html 

*5:「大防風湯(だいぼうふうとう):体をあたため、痛みを発散して治します。病気が長びいて体力が低下し、冷えをともなうときに向く処方です。具体的には、関節リウマチ、慢性関節炎、痛風などに適応します。」おくすり110番 http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se52/se5200096.html

☆この研究報告の先生の所属(2024年時点)

◎丹村敏則先生:JA愛知厚生連 知多厚生病院 健康管理支援センター長 

以上

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