認知症の行動・心理症状が出そうなサインをキャッチしたら、「褒める」「優しく接する」「本人が納得する方法を考える」!(前編)

認知症の行動・心理症状が出そうなサインをキャッチしたら、「褒める」「優しく接する」「本人が納得する方法を考える」!(前編)

認知症の行動・心理症状が出そうなサインをキャッチしたら、「褒める」「優しく接する」「本人が納得する方法を考える」!(前編)(IloによるPixabayからの画像)

何度も同じことを聞くとか、通いなれた道で迷子になると、認知症を疑うことができます。けれど、眠れないとか気分の落ち込み(抑うつ)を認知症の症状とは考えません。ところが抑うつや不眠も、認知症の行動・心理症状(BPSD)の可能性があります。今回は個人差が大きく、種類も多い認知症のBPSDの具体的な症状を紹介します。次回、4月12日の後編では、発症と悪化を避けられる「BPSDが発症しそうなサイン」を紹介します。

1.認知症の行動・心理症状(BPSD)とは?

認知症とは、何かの病気が原因となり、脳の神経細胞がふつうの老化よりも速く減少してしまう脳の病気です。

脳の神経細胞が減少してしまうので、覚えられなくなったり、今日の日付や今の時間が分からなくなったりします。認知機能障害が認知症の主な症状で、病気の進行とともに現れる認知機能障害以外の行動と心理の症状を行動・心理症状(BPSD)と言います

この行動・心理症状(BPSD)は、その方の「性格」や今まで生きてきた「仕事や習慣を反映する生活史」、その方が暮らしてきた「環境」と受けてきた「ケアや介護サービス」、「服用している薬の作用」などが影響を与えていることが多いです。

認知症の行動・心理症状が出そうなサインをキャッチしたら、「褒める」「優しく接する」「本人が納得する方法を考える」!(前編)

認知症の行動・心理症状が出そうなサインをキャッチしたら、「褒める」「優しく接する」「本人が納得する方法を考える」!(前編)(HansによるPixabayからの画像)

さらに、BPSDを発症したりBPSDが悪化するきっかけは以下の3点と考えられています。

◎糖尿病など持病の悪化

◎介護施設入居など環境の変化

◎家族や介護スタッフなどとの人間関係

そして困ったことに、これらのきっかけを通して悪化する可能性もあります。BPSDを悪化させないために、まずは種類の多いBPSDの具体的な症状をご紹介します。

認知症の行動・心理症状が出そうなサインをキャッチしたら、「褒める」「優しく接する」「本人が納得する方法を考える」!(前編)

認知症の行動・心理症状が出そうなサインをキャッチしたら、「褒める」「優しく接する」「本人が納得する方法を考える」!(前編)(ivabalkによるPixabayからの画像)

2.行動・心理症状(BPSD)の分類1の具体例

ここからは山口晴保先生方の論文「BPSDの定義、その症状と発症要因」に掲載の表から行動・心理症状(BPSD)を4つに分類して、具体的な症状を列挙します。(なお、この表は、『長田久雄、佐藤美和子:認知症の行動・心理症 状の考え方.日本認知症ケア学会編「BPSDの 理解と対応―認知症ケア基本テキスト」、 ワールドプランニング、pp1-11, 2011』から引用されたものです。

認知症の主な症状に関連して起こる症状や行動

①自分の言ったことを忘れる、しまった場所を忘れる、繰り返し同じものを買ってくる、同じ質問を繰り返す、食事を何度も要求する

②火の不始末、鍵の不始末、水の不始末

③一日の時間帯がわからない、時間を混同する、今日の日付を繰り返し尋ねる、昼夜逆転

④迷子になる、出口を探して歩きまわる、他人の家や部屋に入る、トイレ以外で排泄する

⑤人を間違える、鏡に映った自分に向かって話しかけたり、食べ物を与えようとしたりする、人形やぬいぐるみを生きているように扱う、食べられない紙や金属などを食べる

認知症の行動・心理症状が出そうなサインをキャッチしたら、「褒める」「優しく接する」「本人が納得する方法を考える」!(前編)

認知症の行動・心理症状が出そうなサインをキャッチしたら、「褒める」「優しく接する」「本人が納得する方法を考える」!(前編)(Guy JasserandによるPixabayからの画像)

⑥現実でないことを作って話す、つじつまの合わないことを言う、死んだ人が生きているかのように話す

⑦話がまとまらず会話ができない、意思疎通ができない

⑧自分が認知症であることが分からない、認知症であることを認めない

⑨身なりに無頓着になる、不潔なままでいる

⑩職場で仕事ができなくなる、釣銭がわからない、日常使っていた電子レンジなどが使えなくなる、薬を自分で管理できない、車道に出る危険性が分からない、他人の物と自分の物の区別がつかない、トイレの水を流さない、トイレに行く途中で漏らす、トイレ以外で排泄する

認知症の行動・心理症状が出そうなサインをキャッチしたら、「褒める」「優しく接する」「本人が納得する方法を考える」!(前編)

認知症の行動・心理症状が出そうなサインをキャッチしたら、「褒める」「優しく接する」「本人が納得する方法を考える」!(前編)(Eric MichelatによるPixabayからの画像)

3.行動・心理症状(BPSD)の分類2の具体例

精神症状

①実際には存在していないものが見える、実際には聞こえない音や声が聞こえる、何も触っていないのに何かに触られている感じがする、その場にないはずの臭いがする

②家族がグルになって自分を邪魔者にするというような被害妄想、嫁が財布を盗んだというような物盗られ妄想、家に女が来て夫と浮気しているというような嫉妬妄想、水道に毒が入っているというような被毒妄想

③夕方から夜になると「家に帰る」と言い出したり、急にソワソワして歩き回ったり、同じことを繰り返す

④眠れない、夜になると大声を出したり暴れる、昼夜逆転

⑤元気がなく気分が落ち込む、ソワソワと落ち着かない、何かにおびえ不安そうにする、必要以上にある物事を心配してしまう、重病になることを恐れたり重病に罹っていると思い込む、眠れないと訴える、何度も薬を欲しがる、何度もトイレに行きたがる

認知症の行動・心理症状が出そうなサインをキャッチしたら、「褒める」「優しく接する」「本人が納得する方法を考える」!(前編)

認知症の行動・心理症状が出そうなサインをキャッチしたら、「褒める」「優しく接する」「本人が納得する方法を考える」!(前編)(ivabalkによるPixabayからの画像)

⑥家事をしなくなる、質問をしても真剣に答えない、ゴロゴロしている、周囲への興味・関心がなくなる、1日中ウトウトしている

⑦気分が変わりやすい、怒りっぽい、興奮しやすい、不機嫌、周囲の状況に関係なく泣いたり笑ったり怒ったりする、些細なことに大笑いしたり涙を流して泣く、性格が変わる

⑧いろいろな物事を自分への攻撃と感じてしまう、邪推する

続きは、4月12日アップ「認知症の行動・心理症状が出そうなサインをキャッチしたら、「褒める」「優しく接する」「本人が納得する方法を考える」!(後編)」でお届けします。

認知症の行動・心理症状が出そうなサインをキャッチしたら、「褒める」「優しく接する」「本人が納得する方法を考える」!(前編)

認知症の行動・心理症状が出そうなサインをキャッチしたら、「褒める」「優しく接する」「本人が納得する方法を考える」!(前編)(larvenfritsonによるPixabayからの画像)

  後編の目次

  4.行動・心理症状(BPSD)の分類3の具体例 行動コントロールの障害

  5.行動・心理症状(BPSD)の分類4の具体例 対人関係の障害

  6.行動・心理症状(BPSD)発症のサインをキャッチして悪化を防ぐ方法

総説「BPSDの定義、その症状と発症要因」国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「BPSDの解決につなげる各種評価法と、BPSDの包括的予防・治療指針の開発~笑顔で穏やかな生活を支えるポジティブケア」研究班 代表者:山口晴保/内藤佳津雄/谷向智/内田陽子/田中志子/藤澤大介/伊東美緒/山上徹也/内藤典子/滝口優子、認知症ケア研究誌、2巻1-16頁、2018年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jdcr/2/0/2_1/_pdf

以上

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