幸せの作り方 ~日頃の小さな喜びや感謝を積み立てしましょう~ vol.20
『翔太君は、5歳の時に私が勤める施設に預けられました。心が凍ってしまった男の子でした。おやつや食事の時間も無表情であまり食べず、みんなで遊んでいる時でさえ笑いません。大人が近づくと全身がこわばり、後ずさりをするんです。職員の私たちには、翔太君が家でどのような仕打ちを受けて育ってきたかがありありと見えました。
彼が「ここはちゃんとご飯も食べられるし、殴られない。安全なんだ」と理解したらしい後も、彼の心は凍ったままでした。笑わない、甘えない、無表情。あるいは突然、他の子どもに殴りかかったり、自分の頭を壁に打ち付けたり・・・
だから、とっても心配しました。心療内科に通院させたり、精密検査を受けさせたり。心が凍ったまま、ポキンと折れてしまわないか怖かったです。
そんな翔太君が高校2年の夏に「岩手県二戸市に行きたい」と突然言い出して、戻ってきたら「浄法寺塗(じょうほうじぬり)という漆器の塗師(ぬし)になりたい。高校を卒業したら、弟子入りしたい」と宣言しました。
もちろんビックリしました!と同時に安心しました。翔太君に会社勤めなんて絶対に無理。でも、技術職の職人さんなら1人で黙々と何かに挑戦したい彼に向いているに違いないと。
それから監督官庁にも相談して、翔太君の生い立ちや性格を理解した上で弟子入りを引き受けて下さる会社を探しました。高校2年の冬休みから現地の会社と面談を繰り返し、やっと先週の面談で受け入れが決まりました。嬉しかった。職員全員でバンザイって叫びました。
翔太君を褒めたいです。最悪の環境を心を凍らせることで生き延び、こっちに預けられてからは親に殴られ虐待された恐怖を克服して、自分の命を守り、さらに生きる目標を見つけ出したんです!
無口で愛想のない表情は昔のままですが、でも彼の目はもう怯えていません。塗師(ぬし)になるという目標に向けて飛翔しようとする彼がとってもまぶしいです。』由佳子さんのご希望で、彼が退園し岩手県に出発する日にお届けすることとなりました。
「絆の絵Ⅱ」は、癒しを届けます。インタビューで、あなたの中に眠っている想いや気持ちを言葉にします。
浅海直二郎商店:https://www.creema.jp/c/kizuna_no_e