「サルコペニアやフレイル」と「認知症」の悪化・進行は、漢方薬+西洋薬+リハビリテーションで防げる!

サルコペニアやフレイルと認知症の悪化・進行は、漢方薬+西洋薬+リハビリテーションで防げる!

「サルコペニアやフレイル」と「認知症」の悪化・進行は、漢方薬+西洋薬+リハビリテーションで防げる!(PexelsによるPixabayからの画像)

学会誌「脳神経外科と漢方」2022年7月号に掲載された症例報告より寝たきり状態から回復できた91歳男性の実例をかいつまんで紹介します。ただし、漢方薬もシニア世代では副作用の発生する頻度が高いので、専門医の受診を強くお勧めします。

1.個人差を診察する漢方医学だからこそ、シニアに有効

小川恵子(*1)先生によれば、『漢方医学には「未病(みびょう)」という概念があり、四診(ししん)によって、フレイルを予防できる。』(*2)そうです。

四診(ししん)とは全人的に症状を把握する漢方医学の診断方法です。同じ症状、病気であっても個人の体質や状態によって抵抗力や病状の進行程度(証)が異なるので、治療薬も異なります。この個人差を診断するために、「望診(ぼうしん)」「聞診(ぶんしん)」「問診(もんしん)」「切診(せっしん)」(*3)を行ないます。

望診:視覚的に診察する診断方法。顔色や皮膚の状態、動作や精神状態、舌の状態などを診断する。

聞診:医師の聴覚と嗅覚によって、患者さんの発する声、咳、体から発するにおいなどから察知する診断方法。

問診:問診とは、患者さんからの訴えを聞き、また医師から質問して、対話によって情報を把握する診断方法。

切診:切診とは、患者さんのからだに直接触れて診断する方法。脈診で、脈拍数、緊張度、不整脈などを診察し、腹診ではみぞおちから下腹部まで診察します。この腹診は江戸時代の医師の経験により我が国で大きく発達し、日本漢方では大変重視されます。

このように漢方医学は、1500年以上の歴史を持つ日本の伝統医学です。日本で日本人を対象として独自に蓄積された臨床経験をもとに理論が形成されています。

1人1人の体質や性格、抵抗力などを診察して治療する漢方医学では、『食欲不振、疲労感、慢性疼痛を改善する治療法があり、これによって活動量が増え、筋肉量低下(=サルコペニア)や身体機能の低下(=フレイル)を予防することができ』(*2)ます。

あなたのお母様やお父様は、「足の痛みやしびれ」あるいは「体のダルさ」を訴えていませんか?漢方薬治療で改善するかもしれません!

サルコペニアやフレイルと認知症の悪化・進行は、漢方薬+西洋薬+リハビリテーションで防げる!

「サルコペニアやフレイル」と「認知症」の悪化・進行は、漢方薬+西洋薬+リハビリテーションで防げる!(kian2018によるPixabayからの画像)

2.サルコペニア・フレイル・認知症進行を抑えた漢方薬治療の実例

目的:サルコペニア,フレイル,認知症を抱えた高齢者が激増しており,医療・介護の現場は日増しに負担が増大している。これら高齢者特有の、サルコペニア,フレイル,認知症の病態に対して,一番重要な食欲,全般的意欲を改善させる。

治療方法:サルコペニア・フレイル悪化のリスクを負った高齢者5症例に対し「中」(胃の機能)を補い,「気力」を益す「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」を積極的に投与し,リハビリテーションを併用する。

結果:約3年間経過を観察したところ、5症例とも寝たきりの悪化を回避し、身体活動性は改善,維持,認知機能の低下は抑制され,健全な生活を送ることができた。

サルコペニアやフレイルと認知症の悪化・進行は、漢方薬+西洋薬+リハビリテーションで防げる!

「サルコペニアやフレイル」と「認知症」の悪化・進行は、漢方薬+西洋薬+リハビリテーションで防げる!(mac8739によるPixabayからの画像)

≪症例1:91歳男性≫

現病歴誤嚥性肺炎を繰り返し、食欲不振、身体活動性低下が進行。誤嚥性肺炎による発熱と呼吸困難で入院。

病歴:65歳より高血圧症、内服加療中。

生活歴:喫煙なし、飲酒なし。

胸部レントゲン写真:肺の両側の下葉と呼ばれる奥の部分に誤嚥性肺炎による影あり。

頭部MRI:全般的に脳の萎縮あり

経過誤嚥性肺炎に対して、抗生物質や抗生剤(西洋薬)を用いた治療を行い、約2週間で回復。

しかし摂食嚥下障害が悪化し,栄養が摂れず,以前から痛みのあった腰から太もも、ふくらはぎ、足先にまで痛みやしびれが拡がり,寝たきり状態となった。

補中益気湯」と、腰から足先に広がる痛みやしびれに対し「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」を投与し,以下のリハビリテーションA~Cを行った。

Aハムストリング (太ももの裏の筋肉)ストレッチーハムストリングが固くなると腰痛や膝の痛みに繋がりやすくなる。

B腹式呼吸―腹式呼吸は息を吸う際にお腹を膨らませ、横隔膜を大きく動かす呼吸法。横隔膜を動かすことで、肺を膨らませたり縮ませたりできる。

C摂食嚥下・離床・起立・歩行リハビリテーションー全身の筋肉量や摂食嚥下機能を保つためにはベットから起き上がることが有効であり、『立ち上がり訓練』と言われる起立リハビリは、日常能力を向上させ、転倒しにくくする効果がある。

サルコペニアやフレイルと認知症の悪化・進行は、漢方薬+西洋薬+リハビリテーションで防げる!

「サルコペニアやフレイル」と「認知症」の悪化・進行は、漢方薬+西洋薬+リハビリテーションで防げる!(kian2018によるPixabayからの画像)

漢方薬リハビリテーションを開始した1週間目ごろからむせることがなくなり,食事量が増えた。男性の表情に活気がみられ,腰から足に広がる痛みやしびれも軽減し,各種リハビリテーションに積極的に取り組むようになった。

約2ヵ月後に自宅退院し,以降,認知機能の悪化はない。元気に週3回の通所リハビリテーションを行っている

サルコペニアやフレイルと認知症の悪化・進行は、漢方薬+西洋薬+リハビリテーションで防げる!

「サルコペニアやフレイル」と「認知症」の悪化・進行は、漢方薬+西洋薬+リハビリテーションで防げる!(kian2018によるPixabayからの画像)

3.認知症に有効な漢方薬

上で紹介した症例報告には、他に86歳女性、87歳女性、79歳男性、85歳女性が脳梗塞や心不全と認知症から西洋医学の薬と「補中益気湯」とリハビリテーションで食欲が改善し寝たきり状態から歩行器などを使って歩けるくらい回復した様子が報告されています。

また、富山大学附属病院のホームページでは、認知症の周辺症状(BPSD)に漢方薬が有効で診療に取り入れていると記載されています。

抑肝散(よくかんさん)が代表的な漢方薬で、その有効性を裏づける臨床試験結果がいくつか報告されています。日本老年医学会のガイドラインでも、認知症に伴うBPSD(周辺症状)のうち、易怒(ささいなことで怒りやすくなること)、幻覚、妄想、昼夜逆転、興奮、暴言、暴力などの陽性症状に有効であるとされています。』(*4)

更に他にも認知症治療に期待される漢方薬が富山大学附属病院のホームページに挙げられていて、今後の漢方薬治療に期待が膨らみます。頑張れ漢方薬!

しかしくれぐれも「補中益気湯」や「抑肝散」をネット等で購入し、内服しないでください!専門医を受診なさってください。

サルコペニアやフレイルと認知症の悪化・進行は、漢方薬+西洋薬+リハビリテーションで防げる!

「サルコペニアやフレイル」と「認知症」の悪化・進行は、漢方薬+西洋薬+リハビリテーションで防げる!(whaltns17によるPixabayからの画像)

富山大学附属病院のホームページでは「一言メモ」と題して以下のように説明しています。

『1.当科では、東洋医学と西洋医学を融合した診療を行っています。漢方治療のみならず、必要に応じて西洋医学の治療を併用し、ほかの診療科とも連携をとって診療にあたっています。必要に応じて現代医学的な検査も行います。

2.当科では、医療用漢方製剤(エキス剤)のほかに、本格的な生薬(煎じ薬)による健康保険を使った診療も行っています

3.当科を受診する患者さんは、消化器疾患、呼吸器疾患、循環器疾患、リウマチ・膠原病、神経疾患、糖尿病などの内科疾患のほか、皮膚科疾患、婦人科疾患、耳鼻咽喉科疾患、精神科疾患、疼痛性疾患などさまざまです。冷え症や虚弱体質など、西洋医学ではあまり治療の対象とならない患者さんも多く受診します。』(*4)

小川恵子先生によれば、『日本の漢方薬治療の最大の特徴は、医療用漢方製剤(エキス剤)148種類、調剤用生薬 約200種が、医師の診察により健康保険で薬剤投与を受けられる』(*2)そうです。

もしもフレイルや認知症の周辺症状に困ったら、東洋医学と西洋医学を融合した診療を行う病院を受診してみてはいかがでしょうか?

サルコペニアやフレイルと認知症の悪化・進行は、漢方薬+西洋薬+リハビリテーションで防げる!

「サルコペニアやフレイル」と「認知症」の悪化・進行は、漢方薬+西洋薬+リハビリテーションで防げる!(Y.H LeeによるPixabayからの画像)

謝辞:協和中央病院 東洋医学センターの玉野 雅裕先生をはじめこの研究に携わった先生方、ご協力なさった患者さんや職員の皆さま等全ての皆様に感謝するとともに、漢方薬が高齢者の健康長寿によりいっそう役立つよう、先生方の益々のご活躍・ご発展を祈念します。

注)

*1: 2020年時点は金沢大学付属病院臨床教授、漢方医学科科長(おがわ・けいこ)、2023年8月時点では広島大学病院 漢方診療センター教授

*2: 「高齢化社会における漢方医学の役割 フレイル予防を中心に 小川恵子」2020年11月25日 明日の臨床 Vol.32 No.2 chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/http://asunorinsho.aichi-hkn.jp/wp-content/uploads/2020/12/2020_3202_02.pdf

*3:「漢方基礎講座 漢方の診断法」漢・方・優・美 クラシエ薬品が運営する医療用医薬品ウェブサイトです https://www.kampoyubi.jp/learn/basic/03.html

*4: 「和漢診療科 Q:漢方薬による認知症治療―認知症 Q:認知症に漢方薬は有効ですか?」富山大学附属病院の先端医療 http://www.hosp.u-toyama.ac.jp/guide/amc/33.html

症例報告や論文等

☆「症例報告:サルコペニア・フレイル・認知症進行抑制を見据えた漢方薬治療   掲載誌 脳神経外科と漢方 = Journal of neurosurgery and kampo medicine : 日本脳神経外科漢方医学会機関誌 / 日本脳神経外科漢方医学会 編 7:2022 p.61-67」chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.jstage.jst.go.jp/article/jnkm/7/1/7_12/_pdf/-char/ja

「症例報告:サルコペニア・フレイル・認知症進行抑制を見据えた漢方薬治療」の共同研究グループの先生方の病院(2021年12月時点)

玉野 雅裕先生:協和中央病院 東洋医学センター、筑波大学附属病院

加藤 士郎先生:野木病院、協和中央病院 東洋医学センター、筑波大学附属病院

岡村 麻子先生:つくばセントラル病院、協和中央病院 東洋医学センター、東邦大学 薬学部

星野 朝文先生:ほしの耳鼻咽喉科クリニック、筑波大学附属病院

高橋 晶先生:筑波大学 医学医療系 災害・地域精神医学

小倉 絹子先生:つくばセントラル病院

中村 優子先生:筑波大学 医学医療系 産婦人科学 

以上

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