”ふつう”なんてもう無いから『みんなの「わがまま」入門』
「忖度」やら「自主規制」など、住みづらい世の中で、「わがまま入門」なんて!?と思いませんか?でも同時に、日々感じているモヤモヤやイライラの原因をつきとめて、もっと周りの人たちへ、また誰よりも自分自身へ優しくなりたいと思いませんか? 「???」と気になったあなたにお勧めしたい本です。
『みんなの「わがまま」入門』富永 京子(とみなが・きょうこ)著、2019年4月発行、株式会社左右社、定価1,750円(税別)ISBN978-4-86528-230-6
学生向けに書かれたこの本は、B6版、271ページで、とても読みやすい1冊です。『1時間目』『2時間目』という名前で5章に分かれ、富永京子先生が指導なさっているゼミの学生さんたちの話や、先生ご自身の体験が盛り込まれていて、明るく楽しくて勉強になる授業を受けている気分を味わえます。
富永京子先生が教えて下さる「わがまま」は、「自己中(自己中心的)」や「自分勝手」「クレーマー」ではありません。『この本では、「わがまま」を「自分あるいは他の人がよりよく生きるために、その場の制度やそこにいる人の認識を変えていく行動」として定義します。』(13ページより引用)と『はじめに』の中で書かれています。
「え?、その場の制度やそこにいる人の認識を変えていく行動って、何?」と思われたあなた、最近の具体例として「#MeToo運動」が挙げられています。ハリウッドの大物プロデューサー、ハービー・ワインスタインによる性的暴行や元TBS記者山口敬之氏の性的暴行に対して「NO!」を突き付けたあの運動です。
『ただ授業などで「#MeToo」やフェミニズムの話をすると、女性かそうでないかを問わず、自意識過剰だとか、たんなる「わがまま」なんじゃないの、という反応が絶対に返ってくる。こうした反応があることはつまり「女」というだけでは、同じ利害を共有しづらいことを意味しているとも言えるでしょう。』(43ページより引用)なぜ同じ女性なのに、同じ意見にならないのでしょうか?
そこで富永京子先生は、各種統計調査のデータを基に『日本が30人の教室だとしたら』と題して素晴らしいデータを作って下さっています。
『日本が30人の教室だとしたら』(20~21ページより引用)
- ひとり親世帯の人は2人
- 発達障害の可能性がある人は2人
- LGBTの人は3人
- 外国籍の人は1人
- 貧困状態にある人は5人
- 世帯年収1000万円以上の人は3人
このデータを見て、どう感じられますか? 年賀状のやり取り程度のお付き合いでは、30人を超えてしまうでしょうか? あなたは、お知り合いの中にLGBTの方や貧困状態の方をご存じですか?私は知りません。でもこの割合から推測すれば、私が知らないだけで、私の知り合いの中にもLGBTの方や貧困状態の方がいらっしゃるはずです。特に貧困状態の方が5人もいらっしゃるとは・・・
富永京子先生はこう書いていらっしゃいます。『私たちは、個人化しているにもかかわらず、それでも親世代から脈々と受け継いだ「ふつう」の幻想を持ち続けているから、(中略)みんな「ふつう」で同じなんだと思ってしまっているのです。』(35~36ページより引用)
2020年の今、1970年代に作られた「ふつう」なんてもう無いんです。それなのに「ふつう」を演じようとするから苦しかったり、「私と同じはずなのに、あの人はズルい」とモヤモヤしてしまいます。
では、どうすれば良いのでしょうか?この続きは『みんなの「わがまま」入門』をどうぞお読みください。とても読みやすくて、目から鱗が落ちます。 以上