1日6時間以上起床していると、要介護でも全身の筋肉量が保たれ、食べる力も維持できると判明!

1日6時間以上起床していると、要介護でも全身の筋肉量が保たれ、食べる力も維持できると判明!

1日6時間以上起床していると、要介護でも全身の筋肉量が保たれ、食べる力も維持できると判明!(9883074によるPixabayからの画像)

東京医科歯科大学の研究グループは、65歳以上の要介護高齢者に対する摂食嚥下(食べる機能)リハビリテーションとして離床が有効であり、少なくとも4時間、可能であれば6時間以上体を起こしていると全身の筋肉量が保たれ、摂食嚥下機能が良い傾向にあることを発見。この研究成果をご紹介します。

健康なわたしたちは無意識のうちに食事を摂っていますが、食事を摂るためには食べ物を認識してから、口に取り込み、咀嚼(*1)し、咽頭(口とのど)・食道を経て胃へ送り込む一連の機能が働くことが必要です。この食べる機能、摂食嚥下機能は、口腔周囲の摂食嚥下関連筋群だけでなく、背筋などの体幹の筋肉量や筋力まで必要なのだそうです。

*1咀嚼とは:口の中に食事を保ち、噛んで細かくし、唾液と混ぜ合わせてひとまとまりにする作業。体幹上部の支えが必要と言われている。嚥下は無意識下でも反射的に起こることがあるが、咀嚼は覚醒していないと実行することができない。覚醒は、目がさめて、意識や感覚がはっきりと働くこと。

1日6時間以上起床していると、要介護でも全身の筋肉量が保たれ、食べる力も維持できると判明!

1日6時間以上起床していると、要介護でも全身の筋肉量が保たれ、食べる力も維持できると判明!(CouleurによるPixabayからの画像)

健康なお年寄りは、いろいろな運動で体幹の筋肉や摂食嚥下関連筋群の機能低下を防ぐことができます。しかし、日常生活動作(Activity Daily of Living, ADL)が低下した高齢者の場合、身体能力の低下により食べる機能を維持するための運動を行うことが困難です。では、どうすれば良いのでしょうか?

まずこの研究は、首都圏在住で東京医科歯科大学摂食嚥下リハビリテーション科から訪問診療を行った、日常生活動作(ADL)が自立していない要介護高齢者にご協力いただいた。年齢、性別、BMI(体格指数)、ADL、CCI(複数の重病をもつ患者の推定死亡率をスコア化する評価方法)、服薬種類数、離床時間を調査した。

1日6時間以上起床していると、要介護でも全身の筋肉量が保たれ、食べる力も維持できると判明!

1日6時間以上起床していると、要介護でも全身の筋肉量が保たれ、食べる力も維持できると判明!(ChiemSeherinによるPixabayからの画像)

ADL(日常生活動作)は要介護認定の基準を参考に分類。

・Group1:介助がなければ歩行や立ち上がりができない人(要介護3相当)

・Group2:介助があっても歩行や立ち上がりが困難な人(要介護4相当)

・Group3:ほとんど寝たきりの人(要介護5相当)


離床時間は、先行研究を参考に、下の3段階とした。

・離床時間が0~4時間

・4~6時間

・6時間以上

生体インピーダンス法(*2)により、四肢骨格筋および体幹の筋肉量を測定し、四肢骨格筋指数(ASMI*3)と体幹筋指数(TMI*4)を算出した。さらに、摂食嚥下機能を、FOIS(*5)を用いて評価した。

*2 生体インピーダンス法とは:体内に微弱な電流を流し、その電気抵抗値を利用して体内の水分量や体脂肪、筋肉量を間接的に求める方法。

*3 四肢骨格筋指数(Appendicular Skeletal muscle Mass Index, ASMI)とは:上肢と下肢の合計の筋肉量を身長の2乗で補正した値。筋肉量を示す。

*4 体幹筋指数(Trunk muscle Mass Index, TMI)とは:体幹の筋肉量を身長の2乗で補正した値。筋力を示す。

*5 Functional Oral Intake Scale, FOISとは:摂食嚥下機能の働く程度をLevel.1「経口摂取なし」からLevel.7「正常(制限なく通常の食事ができる状態)」の7段階で評価する方法。

1日6時間以上起床していると、要介護でも全身の筋肉量が保たれ、食べる力も維持できると判明!

1日6時間以上起床していると、要介護でも全身の筋肉量が保たれ、食べる力も維持できると判明!(shell_ghostcageによるPixabayからの画像)

その結果、以下の点が判明しました。

1.離床時間が0-4時間の者に比べ、4時間以上の高齢者は四肢骨格筋量と摂食嚥下機能が保たれている

2.離床6時間以上の高齢者は、四肢骨格筋に加えて体幹の筋肉量が多く、常食に近い食事を摂っている

3.要介護高齢者の全身の筋肉量は離床により保たれ、摂食嚥下機能は離床時間と体幹の筋肉量と関連する

このような理由が考えられます。

A. 離床して車椅子等に座り、重力に抵抗する時間を設けたことで、全身の筋肉量が維持された可能性があります

B. 食事の形態が常食に近づくにつれ咀嚼(*1)が必要で、咀嚼するためには覚醒と上半身を支える体幹機能が重要。6時間以上の離床で覚醒状態が安定しやすい状態が保たれ、6時間以上の離床で体幹の筋肉量が保たれることから、離床時間によって食べる機能(摂食嚥下機能)に差が生じたと考えられます

1日6時間以上起床していると、要介護でも全身の筋肉量が保たれ、食べる力も維持できると判明!

1日6時間以上起床していると、要介護でも全身の筋肉量が保たれ、食べる力も維持できると判明!(minka2507によるPixabayからの画像)

では、この研究結果から具体的に何をどうすれば良いのでしょうか?

① 離床時間が0-4時間の人は、車椅子上で食事を摂ることを目標に、環境を整えましょう。

② 離床時間が4-6時間の人は、食事等の生活動作以外の余暇時間(テレビを見る等)も車椅子上で過ごすことを目標に、環境を整えましょう。

この記事が、ご両親等の摂食嚥下リハビリテーションのご参考になれば、幸いです。なお、これは論文の紹介ですので、詳細についてはあなたのご両親のかかりつけ医へのご相談をお勧めいたします。これから到来する梅雨時を、ご家族みなさまで健やかに過ごせますようお祈りします。

1日6時間以上起床していると、要介護でも全身の筋肉量が保たれ、食べる力も維持できると判明!

1日6時間以上起床していると、要介護でも全身の筋肉量が保たれ、食べる力も維持できると判明!(Jill WellingtonによるPixabayからの画像)

謝辞:東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野の戸原玄教授ならびに、共同研究に関わったすべての研究者のみならず、患者さんを含むボランティアの方々、ご協力なさった全ての皆様に感謝するとともに、この研究の向上・発展を祈念します。

☆プレスリリース「 要介護高齢者の離床時間、全身の筋肉量および摂食嚥下機能の関連 」https://www.tmd.ac.jp/press-release/20220415-2/

☆Time Spent Away from Bed to Maintain Swallowing Function in Older Adults https://www.karger.com/Article/Abstract/522499

☆国立大学法人 東京医科歯科大学 https://www.tmd.ac.jp/

以上

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