中年期から問題が発生した場合に「回避」行動を頻繁に選ぶ人は、認知機能が低下しやすいと判明!

中年期から問題が発生した場合に「回避」行動を頻繁に選ぶ人は、認知機能が低下しやすいと判明!

中年期から問題が発生した場合に「回避」行動を頻繁に選ぶ人は、認知機能が低下しやすいと判明!(shell_ghostcageによるPixabayからの画像)

日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てる研究を行っている国立がん研究センターの研究を紹介します。今回紹介するのは、40~50代が日常経験する問題や出来事に対する対処の方法(コーピング行動)とその後の高齢期の認知症との関連を調べた研究です。

1.調査方法

対象:1990年に長野県佐久保健所管内に居住していた40~59歳の男女(12,000人)

⇒加えて、2000年のアンケート調査に回答し「対処行動タイプ」が判明した人々(平均年齢57.5歳)

⇒さらに2014~2015年の「こころの検診」に参加し「認知機能」を評価した1,015人

中年期から問題が発生した場合に「回避」行動を頻繁に選ぶ人は、認知機能が低下しやすいと判明!

中年期から問題が発生した場合に「回避」行動を頻繁に選ぶ人は、認知機能が低下しやすいと判明!(kazu284によるPixabayからの画像)

アンケートの回答内容からグループ分けした基準:

①日常経験する問題や出来事に対する行動パターン

*誰かに相談する

*解決する計画を立て実行する

*状況のプラス面を見つけ出す

*回避する

*変えることを空想する

*自分を責める

②対処行動をとる頻度

*頻度が少ないグループ(ほとんどない、たまに、ときどき)

*頻度の多いグループ(かなりよく、非常によく)

中年期から問題が発生した場合に「回避」行動を頻繁に選ぶ人は、認知機能が低下しやすいと判明!

中年期から問題が発生した場合に「回避」行動を頻繁に選ぶ人は、認知機能が低下しやすいと判明!(マサコ アーントによるPixabayからの画像)

2.分析の結果、判明した事実

*「回避する」対処行動をとるグループは、15年後に認知機能が低下した。

*「誰かに相談する」対処行動をとるグループは、15年後の認知症発症の割合が低かった。

*他の5つの対処行動と認知機能に関係は認められない。

*15年後も認知機能が正常だった人は、650人(64.0%)。

*15年後に単一領域(*1)で通常の加齢よりも認知機能低下が進んだ状態(*2)になった人は、116人(11.4%)。

*15年後に複数領域(*1)で通常の加齢よりも認知機能低下が進んだ状態(*2)になった人は、213人(21.0%)。

*15年後に認知症になっていた人は、36人(3.5%)。

*分析対象1,015人のうち、435人(42.9%)が男性。

*結論として、中年期の回避的対処行動は、高齢期に認知機能が低下しやすい。

中年期から問題が発生した場合に「回避」行動を頻繁に選ぶ人は、認知機能が低下しやすいと判明!

中年期から問題が発生した場合に「回避」行動を頻繁に選ぶ人は、認知機能が低下しやすいと判明!(Kohji AsakawaによるPixabayからの画像)

(注*1)認知機能は、記憶だけではなく注意、情報処理、遂行機能、言語機能などんの領域でも検査する。「単一領域」は1つの機能の領域で低下している場合であり、「複数領域」は2つ以上の領域で低下している状態を示す。

(注*2)通常の加齢よりも認知機能低下が進んだ状態とは、Mild cognitive impairment(MCI)。国立長寿医療研究センターのホームページによれば、MCIの定義は以下の通り。

  • 認知機能低下の訴え
  • 正常な認知機能ではない(客観的認知機能の低下)
  • 認知症ではない
  • 基本的な日常生活動作の自立
    中年期から問題が発生した場合に「回避」行動を頻繁に選ぶ人は、認知機能が低下しやすいと判明!

    中年期から問題が発生した場合に「回避」行動を頻繁に選ぶ人は、認知機能が低下しやすいと判明!(あいむ 望月によるPixabayからの画像)

3.今後への可能性

*認知症全体の約70%は神経が変性する疾患で、ストレスが神経を変形させる潜在的メカニズムとして関与していると考えられる。

心的外傷後ストレス障害が、認知機能低下リスクの1つである。

対処行動(コーピング行動)も心理的ストレスを調節する可能性があり、認知機能に影響を与えるとして広く研究されている。

適切に対処すればストレスに関連した神経変性を防ぐことができるが、ずっと続く不適応な対処方法は、脳ネットワークの変化や神経細胞の損傷などの構造変化を引き起こす可能性がある。

ざっくり言い換えれば、回避行動を頻繁にとっているとストレスに晒され続けることとなる。このストレスが脳のネットワークや神経細胞を傷つけて、認知症リスクが高くなる可能性があるということでしょう。

中年期から問題が発生した場合に「回避」行動を頻繁に選ぶ人は、認知機能が低下しやすいと判明!

中年期から問題が発生した場合に「回避」行動を頻繁に選ぶ人は、認知機能が低下しやすいと判明!(マサコ アーントによるPixabayからの画像)

ライフスタイルストレス関連の神経変化の両方を修正する対処戦略は、認知機能低下リスクを防ぐ可能性がある

*性格特性とは異なり、対処行動(コーピング行動)はカウンセリング等を通じて比較的修正可能とみなされる。

*日常経験する問題や出来事に対する対処の方法(コーピング行動)の修正が、将来の認知機能低下を防ぐための1つの方法となり得る

これもざっくり言い換えれば、性格は簡単には変えられない。けれど行動パターン(コーピング行動)はカウンセリング等を通じて変えやすいので、将来的には行動パターンを変えることが認知機能低下を防ぐ方法の1つになるかもしれない、ということです。

コーピング行動と認知症の関係については、より詳細な観察研究が必要ですが、心身ともに忙しくストレス満載の40~50代の行動パターンがシニアになった時の認知症に結びつくなんて恐ろしいです。40~50代のあなたなら、今日から銘記すべきことは「問題を回避ばかりして、ストレスに晒され続けていると認知症になりやすい」です!

中年期から問題が発生した場合に「回避」行動を頻繁に選ぶ人は、認知機能が低下しやすいと判明!

中年期から問題が発生した場合に「回避」行動を頻繁に選ぶ人は、認知機能が低下しやすいと判明!(shell_ghostcageによるPixabayからの画像)

謝辞:国立がん研究センターがん対策研究所 多目的コホート研究プロジェクトに携わる研究者の皆様、ご協力なさったボランティア等全ての皆様に感謝するとともに、この研究の進展・発展を祈念します。

☆国立研究開発法人 国立がん研究センター「コーピング行動(日常経験する問題や出来事に対する対処の仕方)と軽度認知障害・認知症」https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/9019.html

☆National Library of Medicine 「Coping in Mid- to Late Life and Risk of Mild Cognitive Impairment Subtypes and Dementia: A JPHC Saku Mental Health Study」https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9741735/

☆公益財団法人長寿科学振興財団 第4章認知症予防 7.MCI,認知的フレイルの視点から https://www.tyojyu.or.jp/kankoubutsu/gyoseki/ninchisho-yobo-care/h30-4-7.html

以上

Follow me!