1人で悩まない方法がわかる『自傷・自殺のことがわかる本ー自分を傷つけない生き方のレッスン』

1人で悩まない方法がわかる『自傷・自殺のことがわかる本ー自分を傷つけない生き方のレッスン』

1人で悩まない方法がわかる『自傷・自殺のことがわかる本ー自分を傷つけない生き方のレッスン』

今回ご紹介する本が、今までご紹介してきた本と種類が違うことに驚かれたと思います。

約20年前、私は会社で、20代前半の女性の左手首に何本もの傷跡を見てしまった経験があります。「リストカット」という言葉は知っていましたが、初めて見る痛々しい様子に動転し、言葉も出ず、見て見ぬふりで誤魔化しました。この行動が過ちだったと、東京多摩いのちの電話の公開講演会で、初めて教えて頂きました。あの時のわたくしのような過ちを犯す方が減ることを願って、この本を紹介します。(ご相談や傾聴の電話番号一覧は、最下段にまとめてあります)

『自傷・自殺のことがわかる本ー自分を傷つけない生き方のレッスン』国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 松本俊彦(まつもと・としひこ)監修、講談社健康ライブラリー イラスト版 2018年刊

この本は、リストカットなどの自分を傷つけているご本人や死にたい気持ちでいっぱいのご本人と、そのご家族、そして相談されている友人の方に向けて、それぞれの立場で自分を傷つけない生き方や、支援の方法を学べる本です。イラストや解説図が多く、98ページとコンパクトにまとめられた、とても読みやすい1冊です。

この本は5章で構成され、最初の章では自傷(じしょう)、つまりリストカットや自殺願望の実態やリストカットの根底に潜む原因について解き明かしています。

松本俊彦先生監修の『自分を傷つけてしまう人のためのレスキューガイド』によると、松本俊彦先生の研究グループが行ったアンケート調査で、中高生の男子の3~5%、女子の10~17%に自傷行為の経験があると回答があったそうです。つまり自傷行為は隠されていて、想像よりも多くの10代、特に女の子たちが苦しんでいます。

1人で悩まない方法がわかる、『自傷・自殺のことがわかる本ー自分を傷つけない生き方のレッスン』

1人で悩まない方法がわかる、『自傷・自殺のことがわかる本ー自分を傷つけない生き方のレッスン』

第2章では、「死にたい」気持ちや「切りたい」気持ちを抱えて苦しんでいる方たちに、SOSを発信しようと語りかけています。また、まわりの方たちの出来ることも説明され、『もしも相談されたら、「よかった、話してくれて。ありがとう」と感謝を伝えましょう』と具体的な対応を教えて頂けます。

第3章の題名は、『「自傷はやめよう」はやめてみる』です。驚かれましたか?でも真意は、リストカットは表面に現れた現象にすぎないので、自分の体を傷つけずにはいられない程の心の苦しみや辛さに目を向けましょうということです。この章にはご家族やまわりの方へのメッセージが盛り込まれています。『自傷する人を追いつめる言動を控える』とか、『行動の裏にある思いに耳を傾ける』とか。もちろんご本人にも、すぐに切らないためのレッスンが4つ提案されています。

そして、第4章と第5章ではご本人に向けて、心の苦しみやつらさを減らすための方法気持ちのしくみを、分かりやすく丁寧に解説しています。もちろん、20年前の私のように偶然リストカットを見てしまった場合の対応も、この本で説明されています。

1人で悩まない方法がわかる、『自傷・自殺のことがわかる本ー自分を傷つけない生き方のレッスン』

1人で悩まない方法がわかる、『自傷・自殺のことがわかる本ー自分を傷つけない生き方のレッスン』

この深刻で心が痛い本を紹介したかった理由が、もう1つあります。

それは日本財団が2019年3月に発表された「日本財団第3回自殺意識調査報告書」の数値に驚かされたからです。https://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/pr/2019/20190319-26936.html

これは、日本財団が2016年から行っている大規模な自殺意識調査です。第3回では特に対象を18~22歳に絞った補充調査を、2018年に行っています。その結果、本気で自殺を考えたことがある18~22歳は、女性で34%、男性で26%だそうです。こんなにも多くの若い人たちが、苦しんでいらっしゃいますhttps://www.nippon-foundation.or.jp/app/uploads/2019/03/wha_pro_sui_mea_11-1.pdf

彼女たちの苦しみの原因は、学校問題が48%、家庭問題が33%、健康問題が24%、男女問題が19%。特に、学校問題と答えた48%の中の、49%が「いじめ」が原因と答えています。名古屋の小学校で小学5年生の男の子が、同級生たちから総額20万円をカツアゲされたそうですが、この事件も氷山の一角なのでしょうか。

1人で悩まない方法がわかる、『自傷・自殺のことがわかる本ー自分を傷つけない生き方のレッスン』

1人で悩まない方法がわかる、『自傷・自殺のことがわかる本ー自分を傷つけない生き方のレッスン』

この報告書で発見した光明は、18~22歳と23~29歳の女性の70%弱が、相談相手に「両親や祖父母」を選んでくださったことです。18~22歳と23~29歳の男性でも約60%が、相談相手に「両親や祖父母」を選んでくださっています。

「第3回自殺意識調査報告書」の54ページの考察にはこのように記されています。

『若年者に限らず、孤独感と自殺念慮(*)の関係性は強い。自分はひとりであるという感覚が大きいだけでなく、他者からわかってもらえないという感覚が増すことによって、自殺念慮が強まる危険性は高い。つまり、他者から自分をわかろうとしてもらえる(話を聞いてくれる)などの経験が、強まっている自殺念慮を下げることに寄与しうる。(中略) 』*自殺念慮とは、本気で自殺したいと考えたこと

『悩んでいる若年者に寄り添い、関わりを通して「孤立・孤独」を防ぐゲートキーパー(**)の必要性を改めて確認した。さらに、ゲートキーパーの有り様として、声をかけて「自分はひとりだ」という感覚を減らすだけでなく、傍らに居てよく聴き「自分をわかろうとしてくれる」という感覚の増加を目指すという姿勢の重要性も示唆した。』https://www.nippon-foundation.or.jp/app/uploads/2019/03/wha_pro_sui_mea_11-1.pdf

**厚生労働省のホームページでは、以下のように定義されています。『「ゲートキーパー」とは、自殺の危険を示すサインに気づき、適切な対応(悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守る)を図ることができる人のことで、言わば「命の門番」とも位置付けられる人のことです。』https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/gatekeeper_index.html

報告書の考察も、松本俊彦先生監修の『自傷・自殺のことがわかる本ー自分を傷つけない生き方のレッスン』も同じことを説いています。『もしも相談されたら、「よかった、話してくれて。ありがとう」と感謝を伝えましょう』と。あるいは、『行動の裏にある思いに耳を傾け』ましょう、と。

学校のいじめを解決することは、私にできそうもありません。けれど、私の身近な若い方たちに声をかけたり、彼女たちを理解しようと熱心にお話を聴いたりすることならば、できそうです。もっと具体的に知りたいと思われたなら、『自傷・自殺のことがわかる本ー自分を傷つけない生き方のレッスン』をお勧めします。

1人で悩まない方法がわかる、『自傷・自殺のことがわかる本ー自分を傷つけない生き方のレッスン』

1人で悩まない方法がわかる、『自傷・自殺のことがわかる本ー自分を傷つけない生き方のレッスン』

参考

『自分を傷つけずにはいられない 自傷から回復するためのヒント』松本俊彦著、講談社

『もしも「死にたい」と言われたら 自殺リスクの評価と対応』松本俊彦著、中外医学社

どこに相談したらいいか迷われているとき
よりそいホットライン(どんな悩みにもよりそいます)
http://www.since2011.net//yorisoi/
0120-279-338 (フリーダイヤル、24 時間対応、年中無休)
いのちと暮らしの相談ナビ
(インターネット上で、ご自身の悩みや状況、お住まいの地区別に相談先を検索できます)
http://lifelink-db.org/
自殺を考えるほどつらいとき
こころの健康相談統一ダイヤル
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/kokoro_dial.html
0570—064-556 (各都道府県・政令指定都市によって対応する曜日・時間が異なります)
NPO 法人国際ビフレンダーズ 東京自殺防止センター
https://www.befrienders-jpn.org/
03-5286-9090 (午後 8 時~翌朝午前 6 時(火曜日は午後 5 時~翌朝午前 6 時)、年中無休)
※ホームページではその他の常設の電話相談窓口を探すことができます。
日本いのちの電話
https://www.inochinodenwa.org/
ナビダイヤル 0570-783-556 (午前 10 時~午後 10 時)
フリーダイヤル 0120-783-556 (フリーダイヤル、午前 8 時~翌日午前 8 時、毎月 10 日)
※ホームページでは各地のいのちの電話を探すことができます。
大切な方を自殺で亡くされたとき
自死遺族相談ダイヤル(自死遺族のための電話相談)
http://www.izoku-center.or.jp/soudan.html
03-3261-4350 (午前 11 時~午後 7 時、毎週木曜日)
自死遺族傾聴電話(悲しみの傾聴)
https://www.jishi-griefcare.org/%E5%82%BE%E8%81%B4%E9%9B%BB%E8%A9%B1/
03-3796-5453 (午前 10 時~午後 6 時、毎週火曜日、木曜日、土曜日)

以上

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