大量の飲酒以外で生じた脂肪肝の場合、大豆製品、魚介類、海藻類の摂取が肝臓の線維化を防ぎます!

大量の飲酒以外で生じた脂肪肝の場合、大豆製品、魚介類、海藻類の摂取が肝臓の瘢痕(線維化)を防ぎます!

大量の飲酒以外で生じた脂肪肝の場合、大豆製品、魚介類、海藻類の摂取が肝臓の線維化を防ぎます!(likesilktoによるPixabayからの画像)

大阪公立大学大学院 松本 佳也准教授らの研究グループは、大阪公立大学医学部附属病院に通院中の非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)患者さん136名を対象に、毎日の食事内容と筋肉量および肝臓の線維化の進行度合を調査しました。その結果を紹介します。

1.非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)とは?

大量の飲酒以外で生じた脂肪肝は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と呼ばれます。肝臓の細胞の中に中性脂肪が過剰に蓄積した状態です。

肝臓の損傷が繰り返されたり、長期間持続すると、肝細胞による自己修復がうまくいかず、瘢痕組織が生じます。これが線維化です。肝細胞と置き換わった繊維化した組織は、肝臓の内部構造を歪め、肝細胞への血液の供給を制限します。十分な血流が届かないために肝臓の細胞は死滅し、さらに多くの繊維化組織が生じます。

肝臓全体に帯状の瘢痕組織が形成され、肝臓の内部構造が破壊されると、肝臓の再生能力や機能が損なわれる可能性があります。このような重度の瘢痕は 肝硬変と呼ばれます。

瘢痕組織によって胆汁の流れが遮断されると、脂溶性ビタミンを含めた脂肪が吸収されなくなります。さらに、体から排泄される毒素や老廃物の量も少なくなります。肝硬変になると、肝臓で生産される胆汁の量が減少し、消化機能と毒素や老廃物を除去する機能が、さらに妨げられます

このように脂肪肝は、線維化や肝硬変、肝不全、肝がんなど深刻で進行した肝疾患を引き起こすことがあります。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の患者さんは推計で1000万人いるそうです。これらの患者さんの食事療法を求めて、この研究は行われました。(NAFLDは、ナッフルド/ナッフルディーと読みます)

大量の飲酒以外で生じた脂肪肝の場合、大豆製品、魚介類、海藻類の摂取が肝臓の瘢痕(線維化)を防ぎます!

大量の飲酒以外で生じた脂肪肝の場合、大豆製品、魚介類、海藻類の摂取が肝臓の線維化を防ぎます!(Japan-coutry-movieによるPixabayからの画像)

2.研究の概要

対象:大阪公立大学附属病院 肝胆膵内科に通院中のNAFLD患者136名(男性69名、女性67名、年齢中央値60歳)

調査内容:

*食物および栄養素の摂取状況を調べる簡単な自己記入式食事履歴質問票

*肝臓の線維化の度合を調べる肝硬度測定

*体重、骨格筋量、体脂肪率、BMI を測定

大量の飲酒以外で生じた脂肪肝の場合、大豆製品、魚介類、海藻類の摂取が肝臓の瘢痕(線維化)を防ぎます!

大量の飲酒以外で生じた脂肪肝の場合、大豆製品、魚介類、海藻類の摂取が肝臓の瘢線維化を防ぎます!(takedahrsによるPixabayからの画像)

3.判明した結果

*12の食品・食品群の摂取量から計算される日本食スコアが高いグループは、肝臓の線維化が抑制されている

特に大豆製品、魚介類、海藻類の摂取量が多いグループは、肝臓の線維化が抑制されている

大豆製品の摂取量が多いグループは筋肉量が多い

筋肉量が多いグループは肝臓の線維化が抑制されている

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の患者さんの食事療法の1つとして日本食パターンが有効

大量の飲酒以外で生じた脂肪肝の場合、大豆製品、魚介類、海藻類の摂取が肝臓の瘢痕(線維化)を防ぎます!

大量の飲酒以外で生じた脂肪肝の場合、大豆製品、魚介類、海藻類の摂取が肝臓の線維化を防ぎます!(NoName_13によるPixabayからの画像)

4.日本食スコアについて

日本食スコアにはいくつか種類があり、この研究グループでは Zhang らが定義したmJDI12という指標を使っています。ごはん、味噌汁、漬物、大豆製品、緑黄色野菜、果物、魚介類、きのこ類、海藻類、緑茶、コーヒー、牛・豚肉の12食品・食品群を含む日本食パターンの摂取量に着目したスコアです。

また国立がん研究センターが2020年に発表した「日本食パターンと死亡リスクとの関連について」では、8項目(ご飯、みそ汁、海草、漬物、緑黄色野菜、魚介類、緑茶、牛肉・豚肉)の摂取量を点数化する日本食インデックス(JDI8; 8-item Japanese Diet Index)を使用しています。

その結果、「日本食パターンと死亡リスクとの関連について」では日本食パターンのスコアが低いグループに比べて高いグループでは、全死亡のリスクは14%、循環器疾患死亡のリスクは11%、心疾患死亡のリスクは11%低かったことが判明しています。

また、JDI8の8項目の食品において、それぞれの食品の摂取量を多い・少ないの2グループにわけ、「少ない」グループに比べて「多い」グループの死亡リスクを調べました。その結果、摂取量が多いグループで、海草では6%、漬物では5%、緑黄色野菜では6%、魚介類では3%、緑茶では11%死亡リスクが低下します。(「日本食パターンと死亡リスクとの関連について」より)

大量の飲酒以外で生じた脂肪肝の場合、大豆製品、魚介類、海藻類の摂取が肝臓の瘢痕(線維化)を防ぎます!

大量の飲酒以外で生じた脂肪肝の場合、大豆製品、魚介類、海藻類の摂取が肝臓の線維化を防ぎます!(ai subarasikiによるPixabayからの画像)

大阪公立大学のプレスリリースで松本 佳也准教授は以下のように述べていらっしゃいます。

『これまで、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に対する食事療法で有効な候補はありませんでした。今回「日本食パターン」がNAFLDの治療に有効である可能性が示されました。さらなるデータ検証が必要ですが、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)患者の食事療法の1つの選択肢としてお考えいただくと良いと思います。

海草や漬物、大豆製品、緑黄色野菜、きのこ類、魚介類、緑茶などに含まれる健康に有益な栄養素を、いろいろな食品から頂く日本食の知恵に感謝です。

大量の飲酒以外で生じた脂肪肝の場合、大豆製品、魚介類、海藻類の摂取が肝臓の瘢痕(線維化)を防ぎます!

大量の飲酒以外で生じた脂肪肝の場合、大豆製品、魚介類、海藻類の摂取が肝臓の線維化を防ぎます!(takedahrsによるPixabayからの画像)

謝辞:大阪公立大学大学院 生活科学研究科 松本 佳也准教授、医学研究科 藤井 英樹講師ら研究プロジェクトに携わった研究者、ご協力なさった患者さん等全ての皆様に感謝するとともに、この研究の進展・発展を祈念します。

☆大阪公立大学プレスリリース「肝線維化進展の抑制には『日本食』が有効か ~大豆製品、魚介類、海藻類の摂取が重要~」chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.omu.ac.jp/assets/research_0309_matsumoto04.pdf

☆大阪公立大学 生活科学部食栄養学科栄養診療学研究室 https://www.omu.ac.jp/life/nutrimedsci/

☆MDPI 「Severity of Liver Fibrosis Is Associated with the Japanese Diet Pattern and Skeletal Muscle Mass in Patients with Nonalcoholic Fatty Liver Disease」https://www.mdpi.com/2072-6643/15/5/1175

☆MSDマニュアル家庭版「脂肪肝」https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/04-%E8%82%9D%E8%87%93%E3%81%A8%E8%83%86%E5%9A%A2%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E8%82%9D%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E7%97%87%E7%8A%B6%E3%81%A8%E5%BE%B4%E5%80%99/%E8%84%82%E8%82%AA%E8%82%9D?query=%E8%84%82%E8%82%AA%E6%80%A7%E8%82%9D%E7%96%BE%E6%82%A3

☆国立がん研究センター「日本食パターンと死亡リスクとの関連について」https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8499.html

以上

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