家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(前編)

家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(前編)

家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(前編)(Holger SchuéによるPixabayからの画像)

認知症の進行につれて、介護をになう家族の気持ちも変化します。この心理的段階4つを理解すると、気持ちが楽になります。この心理ステップを事例解説で詳しく説明し、さらに家族支援プログラムの実際の事例を詳細に解説した本を紹介します。また、厚生労働省が2000年に設置した「認知症介護研究・研修センター」のホームページには、「認知症の人と家族の一体的支援プログラム」が詳しく紹介されています。このホームページのアドレスも紹介します。

☆本の紹介

『事例で学ぶ 認知症の人の家族支援ー認知行動療法を用いた支援プログラムの展開ー』福島喜代子(ふくしま・きよこ)編著、結城千晶(ゆうき・ちあき)著、2017年2月発行、中央法規出版㈱、定価2,400円+税、ISBN978-4-8058-5471-6

この本の大きさは、縦26㎝弱、横19㎝弱、厚さ1.5㎝弱。ページ数は199ページ。横書きで所々にイラストが挟まれていますが、黒一色で家族支援プログラムを行う専門家向けに書かれています。

内容は、4章に分かれています。が、私が介護なさっているあなたにお勧めするのは、第1~2章だけです。

家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(前編)

家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(前編)(Mari YoshimotoによるPixabayからの画像)

☆第1章 認知症の人の家族介護者がたどる心理的ステップ(9~27ページ)

  1. とまどい・否定の時期(11~16ページ)
  2. 混乱・怒り・拒絶・抑うつの時期(16~20ページ)
  3. あきらめ・割り切り・適応の時期(20~24ページ)
  4. 理解・受容の時期(24~27ページ)

4つの心理的段階を学ぶ事例として、勤続40年の旧国鉄マン、SSさん71歳と奥さんが登場します。彼は奥さんと2人暮らしで、定年退職後はOB会のリーダーや老人会の会長を務め、ゴルフや詩吟などもたしなみ、充実した毎日を送っていました。ところが、70歳を過ぎてから得意の挨拶につまづき、老人会の会計がこなせなくなる等の状況が始まります。

SSさんの症状や行動と奥さんの対応や気持ちが事例で紹介され、解説で説明されます。各項の終わりに「家族支援プログラムでは」と題した専門家向けの記述は、省略可能です。事例が具体的で、「そうそう、ウチも同じだった」と共感できます。

家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(前編)

家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(前編)(Andrea GibhardtによるPixabayからの画像)

  • とまどい・否定の時期とは家族介護者が受け止められず、認知症であるかもしれないことや、認知症であることを否定する時期。変化をうすうす感じながら、気が付かないふりをしたり、「まだ治る」という考えから、訓練しようとしたり、叱咤激励する。
  • 混乱・怒り・拒絶・抑うつの時期とは家族介護者が頭では認知症を理解しつつも、接し方が分からず混乱する時期。認知症の人も自分の変化に混乱し、生活上の障害が増えてくる。介護の時間が増え、家族介護者は怒りを覚えて感情を認知症の人にぶつけたり、拒絶することも。あるいは、家族介護者が抑うつ状態になることもある。
  • あきらめ・割り切り・適応の時期とは家族介護者が「家族が認知症である」ことを受け止め、障害等をあきらめたり、割り切ることが出来るようになり、適応していく時期。この時期には、訓練や元に戻そうと考えなくなる。
  • 理解・受容の時期とは家族介護者が認知症の人の症状や生活障害を理解し、受け止め、共感的な態度で介護を行うことができる時期。認知症の進行でコミュニケーションが成り立たず、生活全般に介護を必要とするかもしれない。が、非言語レベルのサインを読み取り、新たなコミュニケーション方法を体得して「共感的な介護」ができるようになる。
    家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(前編)

    家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(前編)(DidgemanによるPixabayからの画像)

わたしの母は、アルツハイマー型認知症だった父に対し「混乱・怒り・拒絶・抑うつの時期」のまま、見送りました。私は、適応していましたが、非言語的コミュニケーションを体得し、「共感的な介護」が実現できていたか自信がありません。誤嚥性肺炎で緊急入院した最期の病院で、穏やかな表情だった父に絆は感じていましたが・・・

家族支援プログラムでは」によると、『(前略)家族介護者が怒りや拒否的な感情を抱き、それを認知症の人にぶつけると、認知症の人の症状や生活障害は悪化する危険性があること、それを予防あるいは軽減するためには、家族介護者が穏やかに接することが大切であることなどを理解できるよう支援します。(後略)』(20ページより引用)

事例の『SSさんの奥さんは、自分が怒ったり、余計なことを言うとSSさんは不安定になるばかりだ、と理解できるようになりました。』(23ページより引用)このような家族支援プログラムを受けていたら、母も「混乱・怒り・拒絶・抑うつの時期」のまま父を見送らずにすんだのかもしれません。

家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(前編)

家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(前編)(S. Hermann & F. RichterによるPixabayからの画像)

☆家族支援プログラム等の情報

今まさに介護の真っ最中で、「混乱・怒り・拒絶・抑うつの時期」にいらっしゃるとすれば、この本を読む時間も精神的余裕もないと思います。そこで、家族支援プログラムについての情報をお届けします。

◎認知症の人と家族の一体的支援プログラム https://www.dcnet.gr.jp/support/research/center/meeting_center_support/#

全国の事例などの最新情報が載っています。

また、Facebookでいろいろな学習会やイベント情報が公開されています。

◎「認知症の人と家族の一体的支援プログラム 学びのプラットフォーム」https://www.facebook.com/groups/1582572215459489/?ref=web_social_plugin 

家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(前編)

家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(前編)(Ralphs_FotosによるPixabayからの画像)

とまどい・否定の時期」にある方には、『同じ立場の人と気持ちを共有することで安心感を得られる環境があること』(14ページより引用)が重要だそうです。

◎公益社団法人認知症の人と家族の会 https://www.alzheimer.or.jp/

このホームページで、各地の集会や認知症カフェの開催スケジュールなど最新情報に出会えます。

第2章の「認知行動療法を用いた家族支援の実際」は、10項目もありますが、参考になりそうなので詳しく紹介したいです。あまりに長すぎる読んでいただけないので、後編は来週(7月1日)です。

家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(前編)

家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(前編)(マサコ アーントによるPixabayからの画像)

*『事例で学ぶ 認知症の人の家族支援ー認知行動療法を用いた支援プログラムの展開ー』https://www.chuohoki.co.jp/products/welfare/5471/

認知症の人と家族の一体的支援プログラム https://www.dcnet.gr.jp/support/research/center/meeting_center_support/#

「認知症の人と家族の一体的支援プログラム 学びのプラットフォーム」https://www.facebook.com/groups/1582572215459489/?ref=web_social_plugin 

公益社団法人認知症の人と家族の会 https://www.alzheimer.or.jp/

以上

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