家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(後編)

家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(後編)

家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(後編)(Jacques GAIMARDによるPixabayからの画像)

認知症の進行につれて、介護をになう家族の気持ちも変化します。この心理的段階4つを理解すると、気持ちが楽になります。6月24日の前編で、この心理段階について詳しく説明しました。後編では、家族支援プログラムの実例と支援内容を詳しく紹介します。

☆本の紹介

『事例で学ぶ 認知症の人の家族支援ー認知行動療法を用いた支援プログラムの展開ー』福島喜代子(ふくしま・きよこ)編著、結城千晶(ゆうき・ちあき)著、2017年2月発行、中央法規出版㈱、定価2,400円+税、ISBN978-4-8058-5471-6

この本の大きさは、縦26㎝弱、横19㎝弱、厚さ1.5㎝弱。ページ数は199ページ。横書きで所々にイラストが挟まれていますが、黒一色で家族支援プログラムを行う専門家向けに書かれています。

第1章は前編で紹介しましたので、第2章を詳しく紹介します。

家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(後編)

家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(後編)(あいむ 望月によるPixabayからの画像)

☆第2章 認知行動療法を用いた家族支援の実際(29~86ページ)

認知行動療法とは、「ある問題に対し、その人がどのように考えるかが、それに対してどのように感じるかや行動するかに強い影響を及ぼす」という理論を前提にした、人々への支援の方法です。』(30ページより引用)というもので、認知症の人を家庭で介護している方々へ、『「考え方(捉え方)」を変える支援』を行います。

家族介護者が、『肯定的な考え方をすると、前向きな気持ちがでてきて、積極的な行動がとれるようになる』そうです

支援の「実例」が紹介され、「解説」が続きます。次に、その「事例のその後の支援と変化」が詳しく書かれ、「ポイント解説」である時点での確認した事項や変化を促す支援の実際が語られます。最後に「まとめ」「今すぐ使える家族支援プログラム」でその実例の活用方法が示されます。

この第2章で紹介される10の事例が、とても身近で共感を覚える話なので、紹介します。

家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(後編)

家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(後編)(Ralphs_FotosによるPixabayからの画像)

  1. 自分の帰りが遅いと不安を感じ、小言を言い続けてしまう認知症の母親を介護する娘への支援 (31~36ページ)
  2. 食べ物を目にするとすぐに口に入れてしまう妻と、思わず叱ってしまう夫への支援 (37~41ページ)
  3. 日常生活上の動作はできなくなっても、家族への思いやりや気遣いを示してくれる認知症の母親を介護する次女への支援 (42~46ページ)
  4. 会社の重役をしていた頃の記憶が最も残っている認知症の夫を介護する妻への支援 (47~51ページ)
  5. 服薬管理が自分でできなくなっていることを認めない認知症の父親と同居介護する娘への支援 (52~56ページ)
  6. プライドが高くて人からの支援を受け入れられない認知症の義母を介護するお嫁さんへの支援 (57~61ページ)
  7. 亡くなったお姑さんがまだ生きていると思い込んでいる認知症の妻を介護する夫への支援 (62~65ページ)
  8. 歯医者に行くことへの抵抗が強く、質問攻めにしてしまう認知症の夫を介護する妻への支援 (66~72ページ)
  9. -1 持ち物の確認行動が繰り返される認知症の夫を介護する妻への支援 (73~80ページ)

  9.-2 通所仲間への否定的評価が繰り返される認知症の母の家族介護者への支援 (75~80ページ)

   10. コミュニケーションが悪循環に陥っている認知症の母親と同居する娘への支援 (81~86ページ)

家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(後編)

家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(後編)(Gosia K.によるPixabayからの画像)

例えば事例6のプライドの高いFさん(87歳)は、現役時代には何でもできるスーパー主婦で、長年の同居からお嫁さんとの間に葛藤があり、「誰が面倒みてくれと頼んだ!」と何かあるたびに強い言葉で拒否。お嫁さんも譲らず、言い争いは平行線となり、最後にはFさんが「死んでやる!」と大泣きしてご飯を食べなくなる状況です。

このような状況に対して、家族支援プログラムは以下の3点を提案しました。

  1. お嫁さんの「大変な思い」や「一生懸命さ」を評価し、ねぎらいの言葉を継続して伝え続けた
  2. お嫁さんのコミュニケーションを変える方向を探り、「直球よりもフェイント」「負けるが勝ち」「説得よりも納得」のコミュニケーション方法を伝えた
  3. 他の家族から、Fさんを週に2~3回は褒めること、Fさんと楽しい会話をしてもらうこと、お嫁さんとバトルが始まりそうな時は早めに間に入って場面を切り替えることなどを提案 
    家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(後編)

    家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(後編)(klimkinによるPixabayからの画像)

いかがですか? あなたがこの事例のお嫁さんだったら、3点の提案で改善できると思いますか?

書き出せば簡単で、難しい解決方法ではないです。でも、当事者にはストレスもプライドも積年の感情も溜まっていて解決など出来ないと思い込みがちです。

介護の末の殺人事件報道に接するたび、そこまで追いつめられる前に、なぜ家族会や公的支援を受けられなかったのかと悲しいです。

この第2章では、1事例が5ページ程度に纏められているので、興味のある事例だけ斜め読みしても理解できます。

今、あなたが介護で苦しい状況にあり、何かヒントを求めていらっしゃるとしたら、是非この本を読んでみてください。斜め読みでも役立ちます。古い本なので図書館にあるかもしれません。

家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(後編)

家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(後編)(MariyaによるPixabayからの画像)

*『事例で学ぶ 認知症の人の家族支援ー認知行動療法を用いた支援プログラムの展開ー』https://www.chuohoki.co.jp/products/welfare/5471/

認知症の人と家族の一体的支援プログラム https://www.dcnet.gr.jp/support/research/center/meeting_center_support/#

「認知症の人と家族の一体的支援プログラム 学びのプラットフォーム」https://www.facebook.com/groups/1582572215459489/?ref=web_social_plugin 

公益社団法人認知症の人と家族の会 https://www.alzheimer.or.jp/

*家族介護者の心理段階を理解すれば、もっと楽になるから『事例で学ぶ認知症の人の家族支援』(前編)https://kizuna-iyashi.com/2022/06/24/homemade-168/

以上

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