腰痛の85%は、原因をはっきりと特定できない腰痛です。あなたは「慢性腰痛」ですか?
肩こりが酷くて、何か良い治療法はないかとネットサーチしていたところ、「慢性の痛み情報センター」を発見しました。そこには、慢性の痛みには「理学療法・運動療法」や「認知行動療法」が有効との記載があり、市民公開講座のオンデマンド配信もありました。痛みに悩むあなたやあなたのご両親のために、このホームページを紹介します。
1.痛みを感じるしくみ(痛みについてのQ&A より)
「瞬間的な痛み」や「ずきずきするような、長引く痛み」は、傷ついた組織から神経線維を通って、大脳の中の視床という場所で認識されると考えられていました。ところが20世紀後半、「痛みの信号」は視床だけではなく、体性感覚野、帯状回、前頭葉、小脳など、脳の様々な場所で認識されていることが判明します。
これは、「痛みの信号」は本人の喜怒哀楽や運動など、多様な活動により信号自体が変化し、その結果、認識される痛みの強さに変化が生じるということです。
たとえば、
- 集中した運動 → 痛みを軽減する
- 怒り・不安 → 痛みを増強する
- 安心 → 痛みを軽減する
となります。慢性の痛みに悩んでいらっしゃる方は、思い当たることはありませんか?
2.診察の重要性 (痛みについてのQ&A より)
「痛み」は、体にとって警告信号で、「死亡」や「重度後遺障害」につながる可能性のある重要なサインです。
たとえば、「腰痛」の原因の中で、注意すべき代表疾患して、
- 脊椎圧迫骨折(上下方向からの力が加わって生じる背骨の骨折)
- 腫瘍性疾患(脊椎に発生した腫瘍や他の部位にできた悪性腫瘍(がんなど)が転移した腫瘍など)
- 感染性疾患(感染した細菌が血流によって脊椎(背骨)に運ばれ、化膿する病気)
などがあります。これらの病態は、早く治療に取り組まないと、脊髄損傷による下半身の麻痺や、生命の危険に関わることがあるので、早期診断・早期治療が必要です。
このように「痛み」は重要な症状(サイン)の一つですが、「腰痛」の場合、骨や関節、椎間板の変形・損傷といった問題により原因がはっきりとしていることは少なく、腰痛の85%は、原因をはっきりと特定できない腰痛「非特異的腰痛」です。
3.「急性腰痛」と「慢性腰痛」(痛みについてのQ&A より)
「腰痛」は大きく分けて、急に激しい症状の出る「急性腰痛」と、症状は緩慢だけれども長期間にわたる「慢性腰痛」があります。
- 「急性腰痛」ー 実際に体の組織が損傷して起こる(骨折などのような)ものと、そうでない(原因が特定できない)ものがあります。一般に、「ぎっくり腰」などの急性腰痛(原因が特定できないもの)になったときは、じっと安静にしているのではなくて、あまり腰に負担をかけない姿勢を心がけて、できる範囲で日常生活を送るほうが、治りが早いことが分かってきました。
☆高齢の女性の場合は、「ぎっくり腰」でも、脊椎圧迫骨折を生じている可能性が高いので、しっかり病院で検査をうけましょう。
- 「慢性腰痛」ー 3か月以上(あるいは6か月)にわたって腰の痛みが続く状態を「慢性腰痛」といいます。原因を特定できない慢性腰痛では、心理・社会的要因(ストレス)が強く関係している場合が非常に多く存在します。ストレスが原因の「腰痛」の人は痛みに対して間違った考え方を持っている場合が多くあります。そのため、「痛み」に対する考え方を変えて、痛みにとらわれない考え方を身につけることが大切です。
☆このような原因が特定できない「慢性腰痛」に対して最もエビデンス(科学的根拠)のある治療法は「認知行動療法」と「運動療法」です。
4.慢性痛に対する理学療法・運動療法 (痛みについてのQ&A より)
慢性痛(特に筋骨格系)に対する理学療法の原則(例外もあります)は、
- 運動すること(筋肉を使って体を動かすこと)は良いこと
- 運動をしないこと(筋肉や体の一部を不活動にすること)は悪いこと
という考え方です。(但し過度なトレーニングは注意が必要)
具体的には、下記の順番で治療を行います。
① ストレッチやマッサージで筋肉をやわらかくする
② 動けるようにする
③ 筋力トレーニング、体力づくりを行う
最初のストレッチ・マッサージの目的は、
- 深部へのマッサージを通じて局所の血流増大をはかる
- 末梢から中枢へ向けたマッサージによりリンパ液の灌流増加をはかる(動脈、静脈の他にリンパ管という管があり、リンパ管内にはリンパ液が流れ、体液の灌流を担っている。このリンパの流れをマッサージで活発化させる)
- 筋肉・筋膜の緊張をほぐし動かしやすいコンディションにする(筋膜は筋肉の周りや皮膚の下に張られている非常に薄い膜。筋膜は全身に張り巡らされており、身体を支えるひとつの要素として重要な役割を果たす)
その後、身体を動かすことによって筋力や関節機能、また体力の向上を目指します。
このホームページでは、簡単な運動療法としてはウォーキングをお勧めしています。
①歩き方の注意点
- つま先の方向を正す:つま先(人差し指)を進行方向に対して真っすぐ向ける
- おへその下(腹筋)に力を入れる
- おへその下にきゅっと力を入れて姿勢を良くする
- 肩甲骨をよせる:特に猫背の人は肩甲骨を意識してよせてみましょう。こうすることでいつもより肩がしっかり動くようになります
- 膝をゆるめない:体重が乗っている間や着地の時に膝をゆるめないようにしましょう。膝をゆるめることで大腿筋の動きが抑えられてしまいます
- 腕は軽く振る:腕は大振りせずに軽く振るようにしましょう。振るよりも後ろに引くイメージで行いましょう
- 骨盤を立てる
- かかとから着地する:一定の歩幅を保ちながらしっかりと踵から着地します
②ウォーキングを行う時間
- 1日のウォーキング時間は、1回20分以上が目安ですが、最初は無理のない範囲で行いましょう。
- 回数をこなすよりも続けることが大切で、できるだけ毎日継続して行うようにしましょう。
- 運動のできる人は1日2回を目指しましょう。
- 連続して歩くのが大変な時は、何回かに分けて構いませんので、合計20分を目標にしましょう。
- 痛みがひどいときは無理をしないようにしましょう。
③ウォーキングの効果
- 基礎体力・筋力の向上
- 脳を鍛える ー 脳を鍛える運動を行うことで、慢性的な痛みにより阻害されていた痛みをブロックする機能(下行性疼痛抑制系)を本来の状態に戻し、痛みを感じにくくする作用があります。
- 気分の向上
☆ウォーキングを行う際に大切なこととして、運動だけに集中して行うことをお勧めします。
☆ウォーキング以外にはラジオ体操なども慢性痛予防・対策として効果的です。
☆慢性疼痛に効く治療法をビデオ映像で紹介していますhttps://itami-net.or.jp/video
5.市民公開講座のオンデマンド配信を視聴できます
「慢性の痛み情報センター」を厚生労働省の研究班と共同で運営している日本いたみ財団が主催している、市民公開講座もご覧になれます。https://nippon-itami.org/ondemand_youtube-ch_public-lecture/ と https://itami-net.or.jp/public_lecture(一部の講演のみ)
- 『慢性疼痛に対する正しい理解と対処法』 講演①「運動器慢性疼痛の最近の取り組み」(37分45秒)講演②「自宅でできる!痛みと上手に付き合うための運動講座」(22分10秒)
- 『歯科における痛みの治療』講演1「歯には問題がないのに生じる歯の痛み」(31分10秒)講演2「口腔内の痛みと心理的、精神医学的問題」(14分44秒)
- 『多職種連携で挑む慢性疼痛診療』講演1「多職種連携集学的痛み治療〜長引く痛みを良くするために〜」(26分21秒)講演2「痛みを長引かせないカラダの動かし方について〜理学療法士の立場から〜」(25分14秒)
- 『地域連携で挑む慢性疼痛診療』講演1「長引く痛みにどう向き合うか?」(21分58秒)講演2「ホームエクササイズのすすめ」(36分32秒)
- 『体も心も楽になる痛みの対処法』講演1「痛みの対処法 -身体編-」(25分28秒)講演2「痛みの対処法 -心編- 慢性の痛みを理解してマインドフルになろう」(39分18秒)
- 『長引く痛みと上手につきあおう!~人生100年時代を軽やかにいきる~』講演1「痛みが長引くメカニズムとペインクリニック」(19分55秒)講演2「痛みをやわらげる運動の秘訣」(18分54秒)講演3「痛みに負けないこころの整え方」(15分00秒)
最後に、「慢性の痛み情報センター」には看護師が対応する無料の「からだの痛み電話相談」や新しい知見を含めた慢性の痛みの知識と技術を修得した、痛みの治療を適正に行える「からだ・運動器の痛み専門医療者」と「精神心理を取り扱う医療者」を調べることが出来る「慢性の痛み専門医療者のご案内」もあります。
日本の慢性疼痛の保有率は13.4%で、慢性疼痛の患者さんは約1,700万人に上るとされます。そのなかでも痛みが良くならない人は77.6%という調査結果もあります。
もしもあなたやあなたのご両親が「慢性の痛み」を抱えていらっしゃるのなら、この「慢性の痛み情報センター」https://itami-net.or.jp/ をぜひともご覧ください。そして1日も早く痛みが緩和されるよう祈ります。
☆「慢性の痛み情報センター」https://itami-net.or.jp/
☆からだの痛み電話相談 厚生労働省「からだの痛み相談支援事業」<電話相談窓口〜相談料無料〜>
TEL:0561-57-3000(看護師が対応いたします)月〜金曜日 9:00〜17:00(※12:30〜13:30は職員の休憩時間となります。)https://itami-net.or.jp/consultation
☆日本いたみ財団 市民公開講座 オンデマンド配信 https://nippon-itami.org/ondemand_youtube-ch_public-lecture/
以上