女性が魚介類やα-リノレン酸等をよく摂ると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが低下し、動脈硬化リスクも減少!

女性が魚介類やα-リノレン酸等をよく摂ると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが低下し、動脈硬化のリスクも減少!

女性が魚介類やα-リノレン酸等をよく摂ると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが低下し、動脈硬化のリスクも減少!(murakumo28によるPixabayからの画像)

愛媛大学等の共同研究チームは、女性の魚介類摂取が動脈硬化を予防できるとの論文を発表。この研究と「見えない油」と言われ、加工食品に多用されるn-6系脂肪酸(オメガ6)の含有量を食品名から計算できるホームページを紹介します。

1.論文の調査方法

この研究は約1万人の成人を20年間追跡する「愛大コーホート研究」(*1)のデータの一部を活用し、 34 歳~88 歳の男女2,024人(男性 727 人、女性 1297 人)を調査。まず、頸動脈超音波検査装置で首に走っている太い動脈「頸動脈(けいどうみゃく)」の血管壁を測定。さらに血圧測定や血液検査、食事についてのアンケートへの記入を対象者は行いました。このアンケートでは、520食品を含む169項目の食品をどのくらいの頻度で食べるかを尋ねました。

女性が魚介類やα-リノレン酸等をよく摂ると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが低下し、動脈硬化のリスクも減少!

女性が魚介類やα-リノレン酸等をよく摂ると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが低下し、動脈硬化のリスクも減少!(ichimiによるPixabayからの画像)

2.頸動脈の血管壁が厚くなるとどうなるか?

頸動脈(けいどうみゃく)は脳に血液を送る大切な血管です。喫煙、高血圧、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症(痛風)などが原因となり、頸動脈の血管壁にコレステロールや繊維、カルシウム、微小な出血の固まりが少しずつ蓄積することで血管壁の厚みが増します。

頸動脈の血管壁が厚くなったり、血管内が狭く窄(すぼ)むと、一時的な麻痺(一過性脳虚血発作)または脳梗塞や脳出血あるいは心筋梗塞や狭心症など、重い病気を引き起こす恐れがあります。

女性が魚介類やα-リノレン酸等をよく摂ると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが低下し、動脈硬化のリスクも減少!

女性が魚介類やα-リノレン酸等をよく摂ると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが低下し、動脈硬化のリスクも減少!(Annette MeyerによるPixabayからの画像)

この動脈硬化の程度を画像で簡単に確認することができる頚動脈エコー検査で計測する値が、「内膜中膜複合体肥厚度(IMT)」です。

IMTとはIntima Media Thicknessの頭文字で、三層からなる動脈壁の内膜と中膜を合算した厚さです。頸動脈のIMTが1.1mmを超えると動脈硬化と診断され、同様に全身の動脈硬化の進行も進んでいると考えられます。動脈硬化は老化でも進行しますが、通常であれば1.1mmを超えることはありません。

このような理由でIMTは動脈硬化の指標のひとつであり、高血圧・高脂血症・糖尿病・肥満などがあると、血管壁が厚くなって脳血管障害(脳出血・くも膜下出血・脳梗塞)や虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)のリスクが高くなります。(*2)

女性が魚介類やα-リノレン酸等をよく摂ると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが低下し、動脈硬化のリスクも減少!

女性が魚介類やα-リノレン酸等をよく摂ると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが低下し、動脈硬化のリスクも減少!(A.E. EwanによるPixabayからの画像)

3.この研究の結論

女性では、魚介類の摂取量が多いほど、頸動脈壁の肥厚の有病率が低くなり、頸動脈のIMTが薄くなりました。

女性では、 n-3系脂肪酸(オメガ3)の摂取量が多いほど、頸動脈壁の肥厚の有病率が低くなり、頸動脈のIMTが薄くなりました

女性では、植物由来のαリノレン酸の摂取が、頸動脈のIMTにのみ予防的な効果がありました

女性では、n-6 系脂肪酸(オメガ6)の大部分を占めるリノール酸の摂取が多いほど、頸動脈のIMTが薄くなりましたが、頸動脈壁肥厚の有症率とは無関係でした。

女性では、n-6 系脂肪酸(オメガ6)であるアラキドン酸摂取は頸動脈壁肥厚の有症率にのみ予防的な効果がありました

女性が魚介類やα-リノレン酸等をよく摂ると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが低下し、動脈硬化のリスクも減少!

女性が魚介類やα-リノレン酸等をよく摂ると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが低下し、動脈硬化のリスクも減少!(daole68680によるPixabayからの画像)

☆男性では、魚の摂取量は、頸動脈壁の肥厚または頸動脈のIMTと関係がありませんでした。

☆34 歳~88 歳の男女2,024人(男性 727 人、女性 1297 人)の対象者で、頸動脈壁肥厚の有病率は13.0%でした。

☆男性では、魚の摂取量が多いほど、 BMI が正常でした。

n-3系脂肪酸(オメガ3)の摂取量が多いほど、男性では頸動脈壁肥厚の有病率が高く、女性では頸動脈壁肥厚の有病率が低くなりました

女性が魚介類やα-リノレン酸等をよく摂ると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが低下し、動脈硬化のリスクも減少!

女性が魚介類やα-リノレン酸等をよく摂ると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが低下し、動脈硬化のリスクも減少!(SilviaによるPixabayからの画像)

4.女性に嬉しいα-リノレン酸、EPA、DHA、n-6系脂肪酸(オメガ6)、リノール酸、アラキドン酸を解説

☆n-3系脂肪酸(オメガ3):これは体内で作ることが出来ない脂肪酸。n-3系脂肪酸は、α-リノレン酸、EPA、DHA、DPAに分けられ、n-3系脂肪酸のαリノレン酸は体内で作ることが出来ない必須脂肪酸です。

1日当たりの摂取目安:成人女性で1.6~1.9g(18-64歳)

多く含まれている食品:まぐろ・さば・さんま・いわし・えごま油・あまに油・なたね油・えごま・あまに・チアシード・くるみ等(*3)

☆n-6系脂肪酸(オメガ6):これも、健康維持に不可欠な脂肪酸。n-6系脂肪酸(オメガ6)には、リノール酸、アラキドン酸、γリノレン酸に分けられ、リノール酸とアラキドン酸は体内で作ることが出来ない必須脂肪酸。

1日当たりの摂取目安:成人女性で8g/1日(18-74歳)

リノール酸が多く含まれている食品:ベニバナ油、ひまわり油、綿実油、大豆油、コーン油、ごま油、くるみ等

アラキドン酸が多く含まれている食品:レバー、卵黄、サザエ、伊勢エビ、アワビ等

*注意*

リノール酸は必須脂肪酸ですが、とり過ぎはアレルギーなどの炎症と関係します。またリノール酸は、揚げ物・洋菓子類・菓子パン・ラーメン・カレー等の加工食品に使われる、「見えない油」と呼ばれる植物油や植物油脂類に含まれていることも多く、意識せずに過剰に摂っている危険性があると言われています。n-6系脂肪酸は適切な量を摂取することが大切です。(*4)

女性が魚介類やα-リノレン酸等をよく摂ると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが低下し、動脈硬化のリスクも減少!

女性が魚介類やα-リノレン酸等をよく摂ると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが低下し、動脈硬化のリスクも減少!(Sharon AngによるPixabayからの画像)

5.「見えない油」n-6系脂肪酸(オメガ6)の含有量を一般食品名から計算できるホームページ

「今日、何食べた?栄養成分ナビ」(Glico Special Site) https://www.glico.com/jp/navi/

このページでは、それぞれの食品に含まれるエネルギー(カロリー)・たんぱく質・脂質等の成分の含量を計算して、表示してくれます。

では、適切な量を摂取することが大切なn-6系脂肪酸が袋麺に含まれている量を求めてみましょう。

①「食品名で検索」欄に“インスタントラーメン”と入力。⇒3種類の選択肢が表示されます。

②選択肢の中から「こむぎ [即席めん類] 即席中華めん 油揚げ 乾 (添付調味料等を含むもの)」を選択。

③目安の重量画面に変わります。⇒摂取量欄にgを入力し、栄養計算ボタンをクリック。

④栄養計算結果画面が表示されます。

この画面で、「印刷プレビューボタンをクリックすると、n-3系脂肪酸(オメガ3)とn-6系脂肪酸(オメガ6)の含量(g)が表示されます。

もしもあなたが、揚げ物・洋菓子類・菓子パン・ラーメン・カレー等の加工食品をよく摂っていらっしゃるなら、一度このホームページで試してみてください。

魚介類やn-3系脂肪酸(オメガ3)とn-6系脂肪酸(オメガ6)を良く摂っていると、頸動脈硬化のリスクが低下し、頸動脈のIMTが薄くなる可能性があるのは女性だけです!女性のみなさん、この特典を活かして脳梗塞や脳出血(脳卒中)あるいは心臓病(心筋梗塞・狭心症)など、重い病気を防ぎ、いつまでも元気で過ごしましょう!

女性が魚介類やα-リノレン酸等をよく摂ると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが低下し、動脈硬化のリスクも減少!

女性が魚介類やα-リノレン酸等をよく摂ると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが低下し、動脈硬化のリスクも減少!(Darkness_SによるPixabayからの画像)

注*1~*4

(*1)「愛媛大学では、「愛媛大学コーホート研究」への参加者を募集しています」https://www.pref.ehime.jp/h12900/aidai/cohort.html

介護や支援を必要とせず、健康で自立した生活ができる「健康寿命」を伸ばすため、愛媛大学では、ビックデータを活用して、生活習慣病などの環境要因や体質的な要因と病気の関係を明らかにし、予防や治療に役立てる「愛大コーホート研究」を実施しており、現在、研究に御協力いただける方を募集しています。同研究により、健康寿命の延伸はもとより、「柑橘の摂取が多ければ、認知症を予防できるか」、「魚介類の摂取が多ければ、脳卒中を予防できるか」等、医学的な観点からの県産品のPRや新たな商品開発の可能性も期待されますので、愛媛県民の皆様の積極的な参加をお願いいたします。

(*2)「頚動脈プラーク進展はその後の循環器病発症リスクに関係する」国立循環器病研究センター https://www.ncvc.go.jp/pr/release/180601-2_press/

(*3)栄養成分辞典 Dear-Natura https://www.dear-natura.com/article/dictionary/others/212

(*4) 1-3 脂質 P.127- 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf

謝辞:愛媛大学大学院医学系研究科 三宅吉博教授を筆頭に岐阜大学、順風会健診センターの共同研究プロジェクトに携わった研究者、ご協力なさったボランティア等全ての皆様に感謝するとともに、この研究の進展・発展を祈念します。

☆プレスリリース「世界初の研究成果!女性における魚介類摂取が頸動脈内膜中膜複合体厚に予防的 論文発表」(愛媛大学)chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.ehime-u.ac.jp/wp-content/uploads/2022/10/pr_20221025_med.pdf

☆「魚を食べると心筋梗塞や脳卒中のリスクが低下 頚動脈の動脈硬化が減少 魚のEPAやDHAが効果?」(日本肥満症予防協会)http://himan.jp/news/2022/000686.html

☆「Fish and Polyunsaturated Fatty Acid Intake and Carotid IntimaMedia Thickness in Japan: the Aidai Cohort Study in Yawatahama, Uchiko, Seiyo, and Ainan」chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.jstage.jst.go.jp/article/jat/advpub/0/advpub_63781/_pdf/-char/ja

☆「抄録」J-STAGE https://www.jstage.jst.go.jp/article/jat/advpub/0/advpub_63781/_article/-char/ja

以上

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